研究課題
先天性心疾患患者の外科治療において、小児用人工臓器の社会的ニーズが急速に拡大しており、我々の研究グループでは、超微細人工筋肉技術を応用した超小型小児用循環補助システムの開発を進めている。しかしながら、小児用循環補助システムの臨床応用に向けては、アクチュエータ駆動によるデバイスの発熱が課題である。本研究では、体内埋込デバイスの熱力学的応答の伝熱解析により、生体内温度勾配に最適設計された生体を冷却システムの一部とみなす高度熱輸送機構を具現化する。現在開発中のプロタイプ補助装置の病態モデル動物実験の詳細な熱力学的解析を行った。開発中のデバイスは、大静脈と肺動脈を直接接続する人工血管外周部に巻き付け固定するもので、デバイスの発熱は、肺や心臓など周辺組織へ、熱傷等の重大な影響を与える恐れがある。そこで、デバイスの急性動物実験時の駆動試験結果を基に熱力学的見地から伝熱解析を行い、熱力学的応答解析を行った。冷却に必要な熱輸送について検討を行い、生体を冷却システムの一部とみなすことのできるハイブリッド型熱輸送機構開発のための基本性能評価を行った。現在開発中のプロタイプ補助装置に使用するアクチュエータ材料は、70℃でマルテンサイト変態により収縮する形状記憶合金線維であり、温度上昇を抑える冷却機構開発が不可欠である。デバイス周辺部での発熱を、通常37℃で維持される血流に排熱するため、ヒートパイプの基本原理を応用した、複合型排熱機構の具体設計を進めた。ヒートパイプの作動流体の選定、生体適合性を有す可撓性ヒートパイプ構造、吸熱部、排熱部の各要素について基礎的な構造設計を行い、作動流体を液化する凝縮器(コンデンサ)の設計試作を行ない、基礎性能評価試験を実施した。
2: おおむね順調に進展している
現在開発中のプロタイプ補助装置の病態モデル動物実験の詳細な熱力学的解析を行い、デバイスの急性動物実験時の駆動試験結果を基に熱力学的見地から伝熱解析を行い、熱力学的応答解析を行った。冷却に必要な熱輸送について詳細な検討を行い、生体を冷却システムの一部とみなすことのできるハイブリッド型熱輸送機構開発のための基本性能評価を行った。また、プロタイプ補助装置に使用するアクチュエータ材料の通電時の発熱を低減させるシステム開発を進めた。ヒートパイプの基本原理を応用した、複合型排熱機構の具体設計を進めた。ヒートパイプの作動流体の選定、生体適合性を有す可撓性ヒートパイプ構造、吸熱部、排熱部の各要素について基礎的な構造設計を行い、作動流体を液化する凝縮器(コンデンサ)の設計試作を行ない、基礎性能評価試験を実施した。
今後は、デバイス本体にセンサ類を取り付けず、アクチュエータそのものを変位センサとしてみなすことで、センサレス収縮制御システムの構築を試みる。アクチュエータは、通電加熱により5%の収縮し、冷却により元の長さにもどる二方性形状記憶効果を持ち、長手方向短縮変位と内部抵抗に線形関係を持つことから、理論的にサーボアクチュエータの方法論を用いて、変位計測、制御が可能である。体外の駆動装置側の電流計側により、デバイスを駆動した際の電流変化を計測し、通電パルスと収縮による電流変動モニタリングによりセンサレス制御システムの開発を行う。伝熱工学を応用した物理的な冷却機構と電力制御システムの統合により、2重の安全性を担保するフォンタン循環をサポートする小児用肺循環補助装置として改良する。ヒートパイプ型冷却機構の吸熱部構造をデバイスに接続できるようにアクチュエータ配列や収縮機構を見直し、デバイスの発熱を効果的に吸熱し排熱可能な構造とするため改良を加える。同時に、制御システムの実装のため、既存の制御回路に新規開発した電力制御システムを導入する。
デバイス設計試作に伴い、急性動物実験時の駆動試験結果を基に熱力学的見地から伝熱解析を行い、熱力学的応答解析を行った。本年度では、基本的な計測システムの整備と原材料の購入を行った。次年度では、センサレス収縮制御システムの構築を試み、電流変動モニタリング装置の設計試作のための各種機材の導入を進める。また、アクチュエータ材料などの消耗品の購入が必要となる。
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