研究課題/領域番号 |
19K18021
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山田 昭博 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (40781448)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 先天性心疾患 / 冷却システム / ヒートパイプ / 循環補助装置 |
研究実績の概要 |
我々の研究グループでは、超微細人工筋肉技術を応用した超小型小児用循環補助システムの開発を進めている。小児用人工臓器の社会的ニーズが拡大しており、先天性心疾患患者の外科治療において、新たな循環補助システムが必要とされている。我々が開発を進めるデバイスは、小型軽量を実現でき、これまでにない拍動駆動が可能なデバイスである。しかしながら、アクチュエータ駆動によるデバイスの発熱が課題であり、小児用循環補助システムの臨床応用に向けては、解決すべき課題となっている。本研究では、体内埋込デバイスの熱力学的応答の伝熱解析により、生体内温度勾配に最適設計された生体を冷却システムの一部とみなす高度熱輸送機構を具現化する。
現在開発中のプロタイプ補助装置に使用するアクチュエータ材料は、70℃でマルテンサイト変態により収縮する形状記憶合金線維であり、温度上昇を抑える冷却機構開発が不可欠である。デバイス周辺部での発熱を心臓からの血流に排熱するため、ヒートパイプの基本原理を応用し、複合型排熱機構の具体設計を進め、動物実験の結果から熱流体解析を実施した。得られたデータから設計指針を決定し、伝熱用ヒートパイプの作動流体を選定し、吸熱部、排熱部の各要素について構造設計を行い、作動流体を液化する凝縮器(コンデンサ)の設計試作を行ない、基礎性能評価試験を実施した。基礎性能試験の結果、発生した熱を積極的に排熱可能な温度特性が得られた。熱輸送の吸熱側と排熱側の温度勾配から、有効に排熱可能なことを確認でき、生体内伝熱の有効性を示唆するデータを得た。 さらに、デバイス本体にセンサ類を取り付けず、アクチュエータそのものを変位センサとしてみなすことで、センサレス収縮制御システムの構築を試み、センサレス駆動制御方法について、基礎的な設計を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
デバイス周辺部での発熱を心臓からの血流に排熱するため、ヒートパイプの基本原理を応用し、複合型排熱機構の具体設計を進め、動物実験の結果から熱流体解析を実施した。得られたデータから設計指針を決定し、伝熱用ヒートパイプの作動流体を選定し、吸熱部、排熱部の各要素について構造設計を行い、作動流体を液化する凝縮器(コンデンサ)の設計試作を行ない、基礎性能評価試験を実施した。基礎性能試験の結果、発生した熱を積極的に排熱可能な温度特性が得られた。熱輸送の吸熱側と排熱側の温度勾配から、有効に排熱可能なことを確認でき、生体内伝熱の有効性を示唆するデータを得た。さらに、デバイス本体にセンサ類を取り付けず、アクチュエータそのものを変位センサとしてみなすことで、センサレス収縮制御システムの構築を試み、センサレス駆動制御方法について、基礎的な設計を行った。本年度は、新型コロナの蔓延により、動物実験などの実施が困難であった状況から、解析に必要なデータを一部得ることができず、当初予定よりやや遅れた進捗状況となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、開発した冷却システムをデバイス本体と統合し小児用肺循環補助デバイスの改良を行う。伝熱工学を応用した物理的な冷却機構と電力制御システムの統合により、2重の安全性を担保するフォンタン循環をサポートする小児用肺循環補助装置として改良する。ヒートパイプ型冷却機構の吸熱部構造をデバイスに接続できるようにアクチュエータ配列や収縮機構を見直し、デバイスの発熱を効果的に吸熱し排熱可能な構造とするため改良を加える。同時に、制御システムの実装のため、デバイス本体にセンサ類を取り付けず、アクチュエータそのものを変位センサとしてみなすことで、センサレス収縮制御システムの構築を試みる。アクチュエータは、通電加熱により5%の収縮し、冷却により元の長さにもどる二方性形状記憶効果を持ち、長手方向短縮変位と内部抵抗に線形関係を持つことから、理論的にサーボアクチュエータの方法論を用いて、変位計測、制御が可能である。体外の駆動装置側の電流計側により、デバイスを駆動した際の電流変化を計測し、通電パルスと収縮による電流変動モニタリングによりセンサレス制御システムの開発を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
デバイス設計試作に伴い、熱力学的応答解析を行い伝熱システムの試作を行い、センサレス制御手法の基本設計を行った。本年度は、Covid-19の蔓延により、年度当初から実験実施が困難であり、大型動物実験を始め物品購入が必要な研究課題が限定的であり、繰り越しが生じた。次年度では、センサレス収縮制御システムの構築のための各種機材の導入を進めるほか、動物実験に必要な各種消耗品等に使用する。また、アクチュエータ材料などのデバイス開発用消耗品の購入が必要となる。
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