研究課題/領域番号 |
19K18025
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高市 翔平 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (30804877)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 交互積層法 / iPS細胞 |
研究実績の概要 |
重症1型糖尿病患者に対する膵島移植は、低侵襲にQOLの改善だけでなく、生命予後も改善する治療として、年々期待が高まっているが、ドナー不足が問題とされる。そこで、再生医療を含めた膵島移植の長期生着に向けた技術改善と同時に、安全で安定した供給が行える新たな組織移植に期待が寄せられている。これまでに我々は、細胞外マトリックスであるフィブロネクチンとゼラチンによるナノ被膜を細胞表面へ形成し、積層化する技術Layer by Layer method; LbL法を用いた膵β細胞の3次元構造体であるスフェロイドの作成技術を開発し報告してきた(Fukuda et al. Biomaterials. 2018)。臨床応用に向けて残された課題として、1)安全な細胞ソースの確保 2)生体内での至適移植部位の同定 3)長期生着に向けた組織グラフトの血管化があげられ、これらの克服に向けた、更なる研究開発を行うことを目的とし、皮下移植を念頭においた血管化3次元膵組織の構築およびその有効性を検証した。膵β細胞としてMIN6およびiPSC由来β細胞(SC-βcells)を用いLbL法によりスフェロイドを作成し、これをLbL法にて細胞コートしたNHDFおよびHUVECと共培養を行い、血管化組織を構築した。In vitroにおいて、免疫組織化学による評価で、両β細胞を使用して作成した組織内に、インスリン陽性のスフェロイドおよび血管構造を確認した。機能解析では、MIN6を用いた組織で、血管化/スフェロイド組織が非血管化/単一β細胞組織に比較し、ELISA法およびqRT-PCR法で有意にインスリン分泌能の上昇を認めた。In vivoでは、糖尿病免疫不全マウスの皮下に、SC-βcellsを用いた血管化組織の移植を行い、随時血糖値・グルコース負荷試験での血糖値の低下を認め、マウス体内でヒトインスリンの分泌を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
MIN6を用いた血管化3次元血管化膵組織の構築において、間質細胞との共培養にてMIN6スフェロイドの形態が安定せず、至適条件の設定に時間を要した。これは生体内で生分解性をもつフィブリンゲル内で共培養を行うことにより解決した。SC-βcellsを用いた血管化組織でのin vitroでの機能評価について、十分な検証ができておらず課題が残っている。
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今後の研究の推進方策 |
In vitroではMIN6を用いた血管化膵組織の有効性は検討できたため、続いて臨床応用への次のステップとして、SC-βcellsを用いた血管化膵組織の機能的有効性を検証する。 In vivoでは、糖尿病モデル化した免疫不全マウスへ、SC-βcellsを用いた血管化膵組織を移植することにより、皮下への血管新生およびマウスの血糖値の低下を認めた。今後は、移植片内でのβ細胞の表面発現マーカーや転写因子の発現について検討を行う。またSC-βcellsを用いた非血管化組織/血管化2次元膵組織の移植を行い、血管化3次元膵組織と比較し、グラフト生着率およびその効果の違いについて検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
糖尿病モデル化した免疫不全マウスへ、移植片内でのβ細胞の表面発現マーカーや転写因子の発現について検討を行う。またSC-βcellsを用いた非血管化組織/血管化2次元膵組織の移植を行い、血管化3次元膵組織と比較し、グラフト生着率およびその効果の違いについて検証する。
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