研究課題/領域番号 |
19K18026
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
大片 祐一 神戸大学, 医学研究科, 助教 (40597217)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 早産時 / 腹膜炎 / 早産時敗血症マウスモデル / 動物モデル / 新生仔マウス / 外科侵襲 / 免疫 / 免疫抑制 |
研究実績の概要 |
消化管穿孔による腹膜炎に対する治療は外科治療が基本となっているが,外科侵襲に対する免疫応答は明らかではなく,早産児腹膜炎に対する至適な治療法を検討するにあたり適切な動物モデルはないのが現状である.本研究では,過去に報告されている消化管穿孔を模した早産児敗血症マウスモデルに加え,新たに早産児外科侵襲マウスモデルの作成を試み,これらの生存曲線の作成や免疫学的評価を行った.動物実験委員会の承認のもと,まず,早産児敗血症マウスモデルを作成した.成獣マウスの虫垂から採取した糞便を100mg/mlの濃度でPBSに懸濁することでCecal slurry(CS)を作成した.これを生後4日目の新生仔マウスの腹腔内に投与し,死亡率20%となるCS投与量を確定した. 次に早産児外科侵襲マウスモデルの作成を行った.生後4日目のマウスに対して,5mm横切開による開腹術を行い,閉腹後に7日目までの生存率を比較した.CSのみの投与を行ったControl群では90.0%だったのに対し,開腹群では61.7%となり,腹膜炎状態で外科侵襲を加えることで死亡率が上昇していた.さらに両群において血清中の炎症性,抗炎症性サイトカインの経時的測定を試みた.体格の小さい新生仔マウスでも安定した採血が行える心臓穿刺法を開発したことで十分な血液検体量を得ることができ,フローサイトメトリー法によるサイトカイン測定が可能だった.結果,開腹群において炎症性サイトカインであるIL-6・TNF-αが術後超急性期である2時間後に有意な上昇を認めており,急性期の炎症性サイトカインの上昇が死亡率に影響することが示唆される結果を得た.以上から腹膜炎をきたした新生仔マウスに対して単純侵襲となる開腹を行い,その結果を経時的に評価しうるモデルが作成でき,この結果を英語論文として投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は新型コロナウイルス感染症蔓延に伴い,所属機関の方針により研究が休止されていたため,研究を再開できるまでに長期間を要し,さらに研究再開後もマウス繁殖を含めた研究環境の安定に時間を要したことが研究進捗の大きな妨げとなった.
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今後の研究の推進方策 |
現在までの研究結果により更に治療としての侵襲を加えうる基礎的な外科侵襲モデルマウスが作成できた.この外科侵襲モデルマウスについて臓器障害の状態を病理学的に評価するなど多角的に評価を行う.また,並行して,未だ実臨床で未解明である適切な外科的介入の時期・方法について検討を行うのに加え,外科治療以外として過去に成獣マウス腹膜炎モデルで生存予後を改善したと報告されているT細胞を再活性化因子(IL-15) を本モデル群にも応用し,その効果を検証する.この過程で,成獣と比較して新生仔に特有の免疫状態が存在するかも検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症に対する施設対応で実験中止期間があり、研究期間の延長を申請した。サイトカイン測定キット購入費と論文投稿費に使用する予定である。
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