研究課題/領域番号 |
19K18028
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
柏原 秀也 徳島大学, 病院, 特任助教 (10548738)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | Bariatric surgery / 腸内細菌叢 / 肝発癌 / 肥満 / 2型糖尿病 / NASH |
研究実績の概要 |
Bariatric surgeryには心血管イベントの発生抑制効果のほか、癌の発生率も低いことが報告されている。近年、腸内細菌叢の変化(Clostridium減少)による二次胆汁酸の低下がNKT細胞を増加させ、肝癌抑制に寄与することが報告された(Science 2018)。本研究ではDJBによる肝発癌抑制・予防効果について検討を行うこととした。<方法>肥満・糖尿病ラットをDJB群 (D群n=4)、開腹のみSham群 (S群n=4)に分け、術後8週でOGTTを施行した。全血・腸管・肝臓・糞便を採取し、腸管中炎症性サイトカイン (real time PCR)・腸管バリア機能を評価するためclaudin-1蛍光染色、肝NASH grading/staging、肝腫瘍個数・サイズ、microbiomeを比較した。<結果>D群の血糖はS群に比し有意に低値であり、insulin抵抗性が改善していた。D群AST、ヒアルロン酸は有意に低く、NASH grading/stagingにおいても軽度であった。D群microbiomeでinsulin抵抗性・肝steatosisの改善に関連あるとされているProteobacteriaの増加を認めた。さらにD群の腸管炎症性サイトカインIFNγ、IL1β、TNFαはS群より低値を示していた。ileum、colonのclaudin-1蛍光染色を行うとD群で強発現しており、DJBで腸管バリア機能が維持されていることが示唆された。術後8週の時点では2群とも肝や他の臓器に腫瘍形成はみられなかった。<まとめ>Bariatric surgeryであるDJBには腸管炎症沈静化・透過性の維持にょり、各臓器への炎症性サイトカインの流出が抑制されていることが示された。このように各臓器の炎症が抑制されることにより、炎症が起因とされる発癌が予防されていると思われた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肥満糖尿病ラットを用いてBariatric surgeryによる糖尿病・NASH改善効果について、そのメカニズムを検討した。腸内細菌叢ではDJB群でProteobacteriaの増加やBacteroidesの減少がみられ、腸管炎症性サイトカインの低下や腸管タイトジャンックション蛋白であるClaudin-1の発現増加がみられた。これはDJBでは腸管からの炎症性サイトカインやLPSの各種臓器(腸管や肝臓・脂肪など)への流出を防ぎ、インスリン抵抗性やNASH進展を予防していることを示している。さらにこの各種臓器の炎症の沈静化は炎症誘導性の発癌を将来的に予防している可能性を示唆している。現時点でここまで解明しており、概ね順調と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
令和元年度に実施した研究の結果、Bariatric surgeryによる腸内細菌叢の変化、腸管炎症の沈静化、ならびに腸管透過性の維持が示され、それによるインスリン抵抗性やNASH進展への予防、各種臓器における炎症の沈静化による発癌予防が示唆された。これらをもとに、今後は発癌モデルにBariatric surgeryを施行し、Shamとの比較による各種臓器の腫瘍発現、さらには個数・サイズの測定などを予定している。さらにBariatric surgeryを施行した発癌モデルのNkcellなど腫瘍免疫状態を検討することで、そのメカニズム解明に努めていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)計画書作成時に購入予定であった消耗品の価格変動のため。参加予定であった学会が中止となったため。 (使用計画)次年度への繰越額は腸内細菌叢の解析実験に必要な消耗品に使用予定である。
|