研究課題
申請者は今までEGFR/HER2シグナルの下流で活性化するRac1依存的なHER2陽性乳癌細胞の細胞膜形態変化が細胞増殖シグナルを増強させていることを見出し、このRac1活性化にはユビキチンリガーゼ複合体CUL3/KCTD10によるRhoBの恒常的なタンパク質分解が必要であることも明らかにしてきた (Murakami et al., Cancer Sci. 2019)。そこで本研究ではCUL3/KCTD10/RhoB軸によるRac1活性化の分子機構の詳細の解明と、当該分子基盤に対する人為的制御剤のHER2陽性乳癌の新しい治療薬シーズの導出を目的とした。1年目と2年目の解析において、EGF刺激依存的なRac1の活性化に必須なRhoB結合タンパク質として、Protein Aの同定に成功した。Protein Aの発現抑制によりHER2陽性乳癌細胞株SKBR-3 cellsのRac1依存的な細胞膜形態変化 (ラッフル膜形成)が阻害され、細胞増殖も阻害された。3年目には、Protein Aに結合するタンパク質をシグナル伝達関連タンパク質アレイの中からアルファスクリーンを用いて調べた結果、15種類のプロテインホスファターゼを同定した。このプロテインホスファターゼとの相互作用をプローブとして、Protein Aに結合して、その機能を阻害するような化合物の探索をアルファスクリーンを用いて行なった。その結果、コア化合物ライブラリー10,000化合物の中からProtein Aとプロテインホスファターゼの結合を阻害して、HER2陽性乳癌の細胞増殖を阻害する化合物を複数同定した。Protein AとRhoBとの相互作用に対するスクリーニングではヒットしてこなかったことから、Protein Aに結合していると考えている。今後は当該化合物の構造最適化と、個体レベルでの評価を進めていく。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Life Science Alliance
巻: 4 ページ: ー
10.26508/lsa.202101095