研究実績の概要 |
当該研究は、疫学因子、一塩基多型、血清因子をもとに、「化学予防可能なエストロゲンレセプター陽性乳癌発症高危険群」を同定する統計学的モデルを構築することにある。今年度は新規候補とした、特に代謝酵素の一塩基多型の解析が進捗しなかったため、主にデータベース化している疫学因子、従前の実験にて得られた一塩基多型解析の結果、血清因子のデータをもとに研究を実施した。当該研究の目的が「化学予防可能」という集団を同定することであるため、今年度はその端緒としてエストロゲンレセプター陽性乳癌をすでに発症した患者を対象とし、検討を行った。 対象は2007年1月から2010年9月までに診断・ホルモン療法を行ったエストロゲンレセプター陽性乳癌患者とし、血清因子としてプロラクチン、テストステロン、insulin-like growth factor (IGF)-1, IGF binding protein (IGFBP)-3の測定データを用いた。各血清因子の中央値より高い群・低い群、あるいは四分位点ごとにQ1, Q2, Q3, Q4とし、各群間でのエストロゲンレセプター陽性乳癌無再発期間を比較した。この検討によって、血清IGFBP-3がエストロゲンレセプター陽性乳癌の予後予測因子である可能性が示唆された。 今後の研究計画として、上記新規一塩基多型の解析を行い、既存のデータベースへ追加し、研究目的である「化学予防可能なエストロゲンレセプター陽性乳癌発症高危険群」を同定するモデルを構築する予定である。また、現在まで継続して行ってきた、一塩基多型のデータを用いた、疫学因子、マンモグラフィ濃度、血清因子などとの相関についての解析結果を、論文化すべく準備を進める。
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