研究課題/領域番号 |
19K18041
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
根岸 尚子 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (40784294)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 免疫寛容 / 制御性T細胞 / IL-2 / TIGIT |
研究実績の概要 |
本研究では抑制性“免疫学的記憶”の維持がいかにして行われているのかを解明するため、TIGIT→CD155方向によるT細胞のシグナル伝達機構に焦点を当て、CD155下流シグナルにおけるTIGITの転写制御及びT細胞活性化抑制に関わる分子を明らかにすることを目的とする。 今年度はTIGIT発現細胞株や抗CD155抗体と抗CD3抗体を用いた共刺激による、TIGIT→CD155シグナルによるTIGIT発現と抑制機能獲得の検証を行った。その結果、アナジーT細胞との共培養の実験と同様にTIGIT→CD155シグナルによってIL-2の発現低下、IL-10の発現亢進とTIGITの発現誘導が認められた。また、CD155 を介したシグナルはTCR刺激T細胞に転写因子Blimp-1の発現を抗原提示細胞非依存的に亢進しうる事が明らかとなった。これによりTIGIT→CD155シグナルによるIL-2の産生はCD155 を介したシグナルにより誘導されたBlimp-1の発現により抑制される可能性が示唆された。 さらに、本研究の計画3ではマウスモデルを用いたTIGITの発現維持や抑制機能を獲得した細胞の寿命の解析を予定している。そこで、その解析に有用な、Cre-loxPシステムを利用した遺伝子改変マウスを用いたフェイトマッピング解析のためTIGIT-Creマウスを作製した。これにより当初、GFP細胞のみで行う予定であったTIGIT発現細胞の寿命や移植後の細胞の同定をより詳細に解析することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画どおり、TIGIT→CD155シグナルによるTIGIT発現亢進が検証でき、それに伴って発現する転写因子Blimp1の関与がある事を明らかにでき、おおむね順調に研究は達成できている。また、Blimp1の関与が明らかになった事でTIGIT→CD155→Blimp1シグナルの経路を介した抑制機能の伝播を考えられる事ができ、今後の研究の方向性がこのネットワーク中心に行う事を決定できた。 TIGIT-KOマウスを用いた解析がマウスのクリーニングや交配等でやや遅れているが現在繁殖を進めており次年度は順調に行うことができる。 さらに先行してフェイトマッピング解析のためのTIGIT-Creマウスが作製できた。現在、ROSA26-DsRedレポーターマウスと交配中である。 以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
最優先課題として、まずは、「TIGIT→CD155シグナルによるTIGIT発現と抑制機能獲得」について、良好な結果がいくつか得られており研究 の方向性も定まっていることから、必要なデータを追加してなるべく早い時期に論文制作に取りかかる予定である。次年度は繁殖したTIGIT-KOマウスを用いてTIGIT→CD155シグナル経路を介した抑制機能獲得の検証を進める。また、本年度作製したレポーターマウスを用いたin vivoマウスモデルの確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗CD155抗体と抗CD3抗体を用いた共刺激細胞のマイクロアレイ解析が行えなかったため差額が生じた。 当該実験は次年度に行う予定であり、次年度分として請求する額と合わせ、使用する予定である。
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