研究課題/領域番号 |
19K18043
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
植草 省太 日本大学, 医学部, 助手 (70746338)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 神経芽腫 / 放射線増感剤 / ポリアミド |
研究実績の概要 |
cisplatinは放射線増感効果を持つことが知られている。Pyrrole-Imidazole Polyamide(以下PIポリアミド)は芳香族アミノ酸N-methylpyrrole およびN-methylimidazoleで構成されるポリアミドであり、核DNA に配列特異的に結合する。特別な試薬、処置を用いずとも核内に効率良く取り込まれ、また生体内での安定性が高い。 cisplatinをはじめとしたプラチナ製剤の抗腫瘍作用の場である腫瘍細胞の核内へ、効率的に抗腫瘍薬を誘導することで、より強力な抗腫瘍効果を得られることが可能となる可能性がある。また、腫瘍細胞特異的に発現している遺伝子を標的としたPIポリアミドを用いることが可能であれば、正常細胞には取り込まれにくく、腫瘍細胞の核内に特異的に抗腫瘍薬が取り込まれることとなり、副作用を減じることが可能となる。 今年度はまず、非特異的遺伝子配列を標的としたPIポリアミドの核内移行性の高さを利用し、cisplatin類似白金錯体を結合させた化合物(PIP-Pt)を神経芽腫細胞株に投与し、その放射線増感効果および抗腫瘍効果を検討した。 神経芽腫細胞株NB9に対し1μMから10μMの範囲でPIP-Ptを添加した(PIP-Pt添加群)。PIP-Ptの溶媒に用いた0.5%DMSOを添加した群をコントロール群とした。添加24時間後に5Gyの放射線をそれぞれ照射した。放射線照射から24時間後にWST-8 assay にてcell viabilityを確認した。 その結果PIP-Pt添加群でコントロール群と比べ、放射線照射24時間後で放射線増感効果が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は非特異的遺伝子配列を標的としたPIポリアミドを作製し、それらに対し白金錯体を結合させたPIP-Ptを実験に用いたが、作製したPIポリアミドの分子量が大きく、また構造上の問題から溶媒への溶解が当初の想定より困難であり、溶解方法に試行錯誤を要した。 その際PIポリアミドの設計を再度行い、合成する必要があり、時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はNMYCなどの腫瘍特異的配列に特異的に結合するPIポリアミドを作製し、正常細胞への影響を最低限に抑え、より腫瘍特異的に放射線増感効果を得られるようなPIポリアミドを作製する予定である。ただし配列特異的に結合するPIポリアミドは必然的に分子量も増大するため、溶媒への溶解度はこの先も問題となる可能性がある。作製したポリアミドの溶媒への溶解を安定的に増すために今後も構造の検討やDMSO以外の溶媒を用いるなどの対策を要する。
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次年度使用額が生じた理由 |
非特異的遺伝子配列を標的としたPIポリアミドを作製し、それらに対し白金錯体を結合させたPIP-Ptを実験に用いたが、作製したPIポリアミドの分子量が大きく、また構造上の問題から溶媒への溶解が当初の想定より困難であった。そのため培養細胞を用いた実験を想定通りに遂行できなかった。しかし上記問題は現段階で解決しており、当初予定していた翌年度の実験と並行して本年度の予定の実験を行う。
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