昨年度までに、非特異的遺伝子配列を標的としたPIポリアミドの核内移行性の高さを利用し、cisplatin類似白金錯体を結合させた化合物(PIP-Pt)の神経芽腫細胞株に対する放射線増感効果及び抗腫瘍効果を確認した。 5Gyの放射線照射、PIP-Pt10μM添加群でコントロール群と比べ、有意差をもって放射線照射24時間後のcell viabilityの低下を認めた(66%、p<0.05)。引き続きPIP-Ptの抗腫瘍効果、放射線増感効果による細胞死様式の評価を試みたところ、PIP-Ptを用いた放射線照射増感効果による細胞死はアポトーシスの誘導によるものが示唆された。 本年度はMYCN遺伝子を標的としたPIポリアミドに対しcisplatin類似白金錯体を結合させたPIP-Ptを作成し神経芽腫細胞に対する抗腫瘍効果をシスプラチン単独投与と比較検討したところ、優位な差は得られなかった。また、同様に作成したPIP-Ptにおける放射線増感効果を検討したところ、放射線増感に一定の効果を認めたものの再現性を得ることはできなかった。また、MYCN遺伝子を標的としたPIP-Ptの細胞内局在について、細胞分画キットを用いて分画抽出し、各抽出液中のPIP-Ptの量を高速液体クロマトグラフィーを用いて定量したところ、細胞内局在に一定の傾向を得られなかった。細胞内局在の再現性や、非特異的遺伝子配列を標的としたPIP-Ptにおいて得られた抗腫瘍効果及び放射線増感効果を安定して得られなかった原因は、分子量増大による溶解不良の影響が大きいと考えられた。 今後は溶媒としてDMSOのみならず、ひまし油を用いる方法や、非特異的配列を標識するPIP-Ptの正常細胞への影響を確認することで、分子量を下げ溶解度を上げつつ、腫瘍特異的に放射線増感効果を得る事が可能か検討を要する
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