研究課題/領域番号 |
19K18046
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
後藤 航 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 後期臨床研究医 (20824668)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 乳癌 / エリブリン / 免疫微小環境 / 化学療法 |
研究実績の概要 |
エリブリン耐性乳癌における治療戦略の確立のため2種類のエリブリン耐性乳癌細胞株を作製し、その耐性機序の検証を行った研究内容はANTICANCER RESEARCH 39: 4031-4041, 2019に掲載された(2019.7.12 accept). 乳癌に対するエリブリンの新たな治療選択肢の検討に関連して、鉄キレート剤(Deferoxamine)がトリプルネガティブ乳癌(TNBC)およびLuminalタイプの乳癌細胞の増殖を抑制し、その過程で低酸素・血管新生・免疫寛容を誘導している可能性をin vitroで確認した。その結果に基づき、xenograftを用いてエリブリンとの併用療法の有用性を検証したところ、TNBCであるMDA-MB-231細胞株では鉄キレート剤が誘導した低酸素・血管新生・免疫寛容作用がエリブリンにより抑制され、更なる腫瘍縮小効果を示した。以上の内容をBMC Cancer誌に投稿し、reviceで他のTNBC株(BT-549)や鉄キレート剤(Deferasirox)による検証を提案され、追加実験を行った後、2020年11月22日にacceptされた(BMC Cancer, 2020, 20:1215)。 また、RT-PCR法で低酸素耐性Luminal株のESR1発現が減少すること、さらにエリブリン投与でESR1が再上昇する可能性を確認した。Western-blot法により蛋白発現でも検証したうえ、それの結果に基づいてMTT assay法によりそれぞれの条件下でのタモキシフェン(TAM)への反応性を検証したところ、低酸素耐性Luminal株ではTAMの効果が乏しくなり、エリブリン追加投与によりTAMの効果が増強する可能性が示唆された。現在、nude-Mouseを用いたin vivoでの検証中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「エリブリン耐性乳癌細胞株における新たな治療戦略の確立」および「乳癌に対するエリブリンの新たな治療選択肢の検討」という2大テーマを掲げ、エリブリン耐性乳癌細胞株関連の論文accept1編、エリブリン・鉄キレート剤併用療法関連の論文accept1編という形でそれぞれ一定の成果を挙げている。 また、低酸素耐性Luminal乳癌がホルモン受容体発現の減少を認めていることからホルモン療法耐性であることが示唆され、それらの新たな治療法の可能性としてエリブリンの作用機序の検証がin vitroでまとまりつつある。 以上より現在までの進捗状況は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
In vivoの研究を進める。具体的には、エストロゲン投与下のNude-mouseに元Luminal株および低酸素耐性Luminal株Xenograftを作製のうえ、TAMの有効性について検証する。さらにエリブリン追加により、TAM抵抗性が改善するかについても検証する。併せて摘出標本の免疫染色を施行し、TAM抵抗性改善機序についても詳細な検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はin vitroの研究目的(主にRT-PCR、Western-blot、MTT assay法)に使用していたが、当初予定していた国際学会がCovid-19の影響で現地発表でなくなったため次年度使用額が発生している。 2021年度は元々の交付額と併せて,低酸素耐性Luminal株におけるin vivoの検証のため多くのnude-mouse購入や免疫組織染色の抗体試薬購入に使用する予定である。 また可能であれば国際学会で発表を行う予定である。
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