研究課題/領域番号 |
19K18047
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
財津 雅昭 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (20768981)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | グラフト浸潤細胞 / アロ攻撃性リンパ球 / マウス心移植 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は移植後早期グラフト浸潤細胞がアロ攻撃性を有する時期とその細胞集団を明らかにすることである。最初にBALB/cをレシピエントとし、C57BL6(B6)マウスをドナーとした心移植の系を確立した。文献的な報告と同等の成績である拒絶反応による心拍動の停止が、移植後7-10日で生じることを確認した。次にこの心グラフトへのグラフト浸潤細胞を確認したところ、移植後5日目で優位に増加することが分かった。移植後3日目、5日目のグラフト浸潤細胞の由来をFACSにて検討したところ、これらはほぼ全てがレシピエント由来であることが分かった。またこの表現型はsyngenic グラフトも含めていずれも記憶細胞であった。さらに、120時間と72時間の移植後のグラフト浸潤細胞の違いはIFNg、TNFa、Perforin、Granzyme Bなどを産生するcytotoxic CD8陽性細胞の割合であることが明らかになり、表現型としては移植後5日目の細胞集団がアロ攻撃性を持つ可能性が示唆された。続いてこれらのグラフト浸潤細胞の実際の機能、特にグラフト拒絶に関わるかどうかを確認するためにin vivoでの系を検討した。即ち、この少量のグラフト浸潤細胞を免疫不全マウスへ再構築し、その免疫反応を確認することとした。免疫不全マウスはBALB/c Rag2-/- IL2Rg -/- (BRG)マウスを用いた。グラフト浸潤細胞は非常に少数にも関わらず全例でBRGマウスへの再構築が可能であった。このマウスにドナーと同系統の心グラフト片を移植したところ、移植後3日目では拒絶が生じなかったが、移植後5日目で拒絶反応が生じた。このことは移植後5日目のグラフト浸潤細胞にアロ攻撃性のリンパ球が含まれていることを示している。これらの研究成果をまとめ、アメリカ、ヨーロッパ、日本移植学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に沿って、グラフト浸潤細胞の表現型を評価し、またこの細胞をadoptive transferすることでグラフト浸潤細胞の移植グラフトに対する機能的評価をした。この結果を学会で報告し、当初の初年度に実施する予定であった内容を完遂できている。
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今後の研究の推進方策 |
グラフト浸潤細胞の細胞集団についてPCRを実施し、分子レベルでの細胞集団の特徴を移植後3日目、5日目を比較することで明らかにする。またグラフト浸潤細胞を周りの環境であるグラフトと共に移植した場合の拒絶の時期等を調べる。心臓だけでなく皮膚移植における変化を観察する。3日目のグラフト浸潤細胞では拒絶反応が生じない場合、この早期グラフト浸潤細胞は拒絶することができないだけでなく、グラフト保護効果があるのか調べる。これらの結果をまとめて論文化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
グラフト浸潤細胞の表現型とそのvivoにおける機能評価に必要な経費として使用したが、来年度はグラフト浸潤細胞の分子レベルの評価とグラフトそのものを再移植する実験系に次年度使用額が必要になる。
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