昨年度に引き続き臓器虚血再灌流障害に対する修復の促進とミセルの応用をテーマに実験計画を進め、結果が得られつつある状況である。前年度に複数のシグナル因子及び高分子ミセルの作成のトライアルを行い、最終的に炎症性メディエーターであるHMGB-1分子の一部分からなるペプチド(HMGB-1フラグメントと呼称する)に着目してこのシグナルタンパクによる虚血再灌流障害の抑制効果につき検証を進めた。また、HMGB-1フラグメントの血中安定性は低いため、ゼラチンとPolyethylene glycol(PEG)から成る両親媒性高分子を作成(PGE化ゼラチンと呼称する)した。このPGE化ゼラチンは、水環境中でナノサイズのミセルを形成する事を動的散乱法等により確認し、またこのPEG化ゼラチンによるHMGB-1フラグメントの内包効率をHPLC等を用いて確認した。 動物実験モデルとしては、ラット小腸の虚血再灌流障害モデルを確立し、このモデルに対してHMGB-1フラグメント内包PEG化ゼラチンによる虚血再灌流の抑制効果を、現在も継続して検討している。 進捗具合に遅れはあるものの、高分子ミセルを用いた虚血再灌流障害抑制についての骨子は得られており、最終的な詰めの実験等をさらに継続した上で、成果として報告する事を検討している。
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