研究課題
すでに収集済みであった、書面で検体収集、研究使用の同意を得た術前治療未施行、根治手術可能な浸潤性乳管癌10例の検体(正常乳腺10サンプル、乳癌組織50サンプル)に対して、DNA抽出後、全エキソームシークエンス(WES)を施行した。WESの結果をもとに、スーパーコンピューターSHIROKANEを用いてmutation callを行い、①遺伝子変異解析を行った。①で得られた結果をもとに、統計ソフト分析ソフトRを用いて、②変異スペクトラム解析、③染色体・遺伝子レベルのコピー数解析を施行した。公共データベースTCGA(The Cancer Genome Atlas)、METABRIC(Molecular Taxonomy of Breast Cancer International Consortium)(欧米人乳癌)のデータと比較して、当院検体(日本人乳癌)において変異が多く見られた、Driver遺伝子4遺伝子、Driver遺伝子以外の6遺伝子を同定した。また、スペクトラム解析では欧米人と比較して差があるシグネチャーが確認できた。コピー数変化の欧米人乳癌との比較は今後施行予定である。
2: おおむね順調に進展している
ゲノムシーケンスデータを用いた解析は、共同研究施設である東京医科学研究所ヒトゲノム解析センターの先生に指導していただき技術習得に努めているが、ドライ解析技術習得に時間を要しているため。また、公共データベースのデータを使用するための申請に時間を要しているため。
日本人乳癌の公共データベースJCGA(Japanese cancer genome atlas)の乳癌データ、これまでに加藤ら(Oncotarget. 2017)が報告した乳癌の多領域検体解析データを用いて、当院で確認された遺伝子変異、変異シグネチャーが他のデータセットでも確認できるか検証する。また、これらのデータと当院データを日本人乳癌データとして合わせ、欧米人乳癌(TCGA、METABRIC)データと比較し、日本人乳癌の遺伝学的特徴を解明する。さらにはYates L. Rらが報告した50例の欧米人乳癌の進化系統樹(Nat Med. 2015)と比較し、日本人乳癌の進化系統の特徴を見出す。特に系統樹の幹でクローナリティが高い、またdN/dS比(Cell. 2017)の高い遺伝子を治療標的候補として選出する。さらに最終的には治療標的候補として選出された遺伝子の機能解析まで施行したいと考えている。
次年度の研究消耗品で使用予定。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件)
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