研究課題/領域番号 |
19K18059
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
吉井 大貴 熊本大学, 病院, 非常勤診療医師 (00792582)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | SOX9 / ノックアウトマウス / 細胆管反応 / 胆汁うっ滞 / 障害肝 |
研究実績の概要 |
本課題では、胆道閉鎖症をはじめとした慢性肝疾患にみられる細胆管反応(ductular reaction, DR)のメカニズムの解明とその進展抑制による肝障害(線維化)の治療に、SOX9がターゲットとなりえるか否か追究し、肝疾患に対する新たな治療戦略の構築へとつなげることを目的としている。2019年度は、ヒト障害肝におけるSOX9発現についての免疫組織学的な解析と、野生型マウスとSox9ノックアウト(KO)マウスとを用いた障害肝の比較解析およびSOX9の上流シグナルの発現についての遺伝学的な解析を行った。 ヒト胆汁うっ滞性障害肝には肝細胞におけるSOX9の異所性発現が見られたが、その局在に違いがみられた。原発性胆汁性胆管炎では細胞質における異所性発現が多く見られ、胆道閉鎖症、C型肝硬変や原発性硬化性胆管炎では核における異所性発現が多くみられた。核で異所性発現が多く見られた疾患ではDRが進展している傾向がみられた。マウスの障害肝を用いた実験では、総胆管結紮による胆汁うっ滞性障害肝で有意にSOX9の異所性発現がみられ、四塩化炭素による肝細胞性障害肝ではほとんどみられなかった。DRは胆汁うっ滞性障害肝で特に進展しており、NOTCH2(Notchシグナル経路)が特に活性化していた。総胆管結紮モデルのSox9KOマウスでは、野生型マウスにくらべてDRや線維化の進展(Col1a2)は有意に抑制されていた。以上より、SOX9は胆汁うっ滞性障害肝においてDRの進展に寄与している可能性があり、SOX9の上流シグナルの活性化などにより異所性発現したSOX9が肝細胞の胆管様細胞への転換に寄与している可能性が示唆された。細胞外マトリックスの構成因子であるType I コラーゲンの進展抑制には、DRの進展抑制による線維化抑制という間接的な関与およびSOX9-COL1の直接的の関与が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度の当初の計画通りに実験がすすみ結果を出すことができている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、肝内胆管の形態の可視化に取り組んでいる。当初の予定では胆管内に樹脂を注入する予定であったが、より簡単な方法で胆管の可視化が可能なことがわかった。野生型マウスとSox9KOマウスの胆管形態の違いを可視化させて、胆管発生におけるSox9の意義について解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
胆管発生・形態形成に関わる研究は次年度にも行う必要があり、それに関わる研究費として次年度使用する予定である。また、本年度の研究により明らかになった結果は本年度の学会で発表したり、研究のさらなる進展のため情報収集に使用する予定である。また論文投稿の校正費および投稿費として使用する予定である。
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