研究課題
生体組織や癌細胞を可視化することは、正確な解剖を把握し、癌細胞を完全切除することを目指す外科手術の安全性と精度向上に有用である。自家蛍光を利用した生体組織の識別は薬剤投与が不要で安全性が高く、幅広く応用可能である。特に外科手術においては、蛍光法により肉眼では捉えられない生体の生物学的情報を可視化することにより外科手術の精度が向上し、また患者の生存率の上昇や合併症の低下にも寄与しうる有用な技術となりえる。我々は本研究において以下の事柄、すなわち①悪性腫瘍を含む人体組織が有する未知の新たな自家蛍光の探索を行い、画像検査や外科手術における生体組織可視化の新しい応用可能性を見出す、②自家蛍光の原因物質を同定しその生物学的意義を明らかにする、③組織の自家蛍光を利用した安全で簡便な術中蛍光イメージングシステムを構築する、ことを目的とする。①については申請者が所属する外科教室で行われる腫瘍手術において、正常組織や腫瘍組織を採取している。それらの検体を用いて蛍光指紋測定を準備中である。(他研究機関との共同研究)②については当科の手術によって得られた副甲状腺組織を用いて質量分析計を用いた実験を行っている。現在まだ未知である、自家蛍光の原因タンパク質の同定を試みている。③については①、②の結果を用いて新たな蛍光測定システムを設計すること、加えて手術中に使用しやすいインターフェイスの改良を計画している。
3: やや遅れている
①未知の新たな自家蛍光の探索を行い、画像検査や外科手術における生体組織可視化の新しい応用可能性を見出す:様々な人体組織の自家蛍光探索に関しては、他研究機関と共同して組織ごとの蛍光指紋を測定予定である。測定に向けて準備を行っている。②自家蛍光の原因物質を同定し、その生物学的意義を明らかにする:副甲状腺組織の自家蛍光について、手術症例での蛍光強度を測定し、必要に応じて組織の保存を行っている。自家蛍光物質の同定のために、蛍光強度の差が見られた副甲状腺組織を用いて質量分析を実施中である。質量分析によって蛍光強度の差の原因となっているタンパク質を同定する予定である。③組織の自家蛍光を利用した安全で簡便な術中蛍光イメージングシステムを構築する:①、②の結果を用いて、蛍光機器の作成を行う予定である。使用しやすいインターフェイスも必要となるため、PCやタブレット端末でのアプリケーション製作も計画している。
①未知の新たな自家蛍光の探索:新たな自家蛍光が発見できれば、臓器間での蛍光指紋を比較し、手術において有用な自家蛍光測定法を考案する。②自家蛍光の原因物質同定:副甲状腺組織の自家蛍光の原因となっているタンパク質候補が同定されれば、細胞株を用いて遺伝子導入やsiRNA実験を行い、自家蛍光能が付与できるかどうかを検証する。③組織の自家蛍光を利用した安全で簡便な術中蛍光イメージングシステムを構築する:①において新しい自家蛍光を同定した後に、それにあった励起光照射と蛍光検出が可能な工学システムを作成する。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
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Asian Paci c Journal of Cancer Prevention
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10.31557/APJCP.2019.20.6.1909