研究課題/領域番号 |
19K18062
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
中山 裕子 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (90769001)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 乳癌 / 腫瘍微小環境 / PD-L1 / EMT / 浸潤性乳管癌 / 浸潤性小葉癌 |
研究実績の概要 |
各種癌領域において手術療法・放射線療法・化学療法に次ぐ第4の治療戦略としてImmune Checkpoint Inhibitors (ICIs) が世界的に注目されている。特に抗PD-1抗体/抗PD-L1抗体が中心的な役割を担い、乳癌領域でも手術不能・再発トリプルネガティブ乳癌に対し、化学療法との併用で抗PD-L1抗体が適応となった。一方で、いまだバイオマーカーが確定しておらず、各種癌における腫瘍微小環境の解明が急務である。前研究にて、IFN-γ signaling pathwayの一つであるphospho signal transducer and activator of transcription 1 (p-STAT1)が乳癌において抗PD-1/抗PD-L1抗体治療適応のバイオマーカーとなりうると報告した。この研究課程で、IFN-γの関与とは別の発現機構によると考えられるPD-L1陽性乳癌細胞の存在を認めた。この傾向は浸潤性小葉癌に強く、小葉癌の生物学的性質を考慮すると、EMTが関与している可能性が高いと考えた。そこで、乳癌におけるEMTとPD-L1発現の関連性について解析を行い、EMT化した乳癌細胞に対し、抗PD-1/抗PD-L1抗体が治療適応となるか検証したいと考え、以下の如く本研究を立案した。①乳癌検体を用い、腫瘍微小環境におけるPD-L1・HLA-class I・p-STAT1・E-cadherin・vimentinの発現を免疫組織染色を用い評価する。EMT phenotypeとHLA class I、PD-L1の発現、組織型、他関連因子との関係について統計学的に解析する。②EMT化したヒト乳癌細胞株を用い、PD-L1の発現機構を解析する。また、CD要請T細胞に及ぼす影響について検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
免疫組織染色を用いて解析する対象症例を浸潤性乳管癌と浸潤性小葉癌のみとし、傾向スコアマッチングを用いて再度検証を行った。対象症例が確定したことから免疫組織染色の解析を開始する。また、対象症例に対し、2種類の抗PD-L1抗体を用いる方針とし、抗体について検証し購入した。 コロナ禍の影響にて抗体・資材確保が遅れている。抗体・資材を確保後、研究を再開する。
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今後の研究の推進方策 |
本申請研究の課題である「乳癌における抗PD-1/抗PD-L1抗体の治療適応」について検証するために、以下の如く研究を推進していく。 ①乳癌症例の免疫組織染色結果から、PD-L1の発現とEMT marker、および他の関連因子との相関関係について詳細に検証する。 ②乳管癌と小葉癌のヒト乳癌細胞株を準備し、PD-L1の発現の違いについて検証する。 ③②をEMT化させ、EMT化前後におけるPD-L1および関連因子の発現の違いについて検証する。 ④③を用い、抗PD-1/抗PD-L1抗体下におけるCD8陽性T細胞への影響について検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会参加の旅費が発生しなかったため、次年度使用額が生じた。 次年度の学会参加のための旅費として使用予定。
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