本研究では、温度応答性培養皿を用いた脂肪由来間葉系幹細胞(ADSC)と肝細胞による積層化シートの開発を行った。 2019年より積層化シートを作製し、2020年には積層化シートを実際に免疫不全マウスの皮下に移植する実験を行なった。ADSCと肝細胞を積層する意義を明瞭化するために、温度応答性培養皿を用いて肝細胞単独シートを作製し、積層化シートと肝細胞単独シートを比較検討した。2020年の実験では、in vitroにおいても、in vivoにおいても、積層化シートの肝細胞の方がViabilityが高いことを確認した。 2021年度は、2020年度の実験結果を受けて、積層化シートと肝細胞単独シートの細胞接着の強度を、細胞接着因子の免疫染色や電子顕微鏡を用いて確認した。また、ADSCと肝細胞を積層化し、その細胞接着を壊さずに移植する効果について、サイトカインのシグナル伝達物質の免疫染色を行うことで確認した。また、肝細胞単独シートでも同様の免疫染色を行ない、積層化シートの方が明らかにシグナル伝達物質の活性化が高いことを確認した。 肝硬変マウスの作製は、免疫不全マウス(SCIDマウス)の場合、B6マウスと同じ量の四塩化炭素を投与すると、急性肝不全を発症し、死亡してしまうため、免疫マウスの投与量を調整する必要があることがわかった。免疫マウスへの肝表面のシート移植も行なったが、生着はしたものの、ドナーの肝細胞とレシピエントの肝細胞の区別に難渋した。MHCの蛍光染色にて区別が可能か検討したが、有意な結果は得られなかった。
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