研究課題/領域番号 |
19K18068
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
洲尾 昌伍 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (40771019)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | PD-L1 / TILs / Neuroblastoma / chemotherapy |
研究実績の概要 |
今回,小児神経芽腫におけるPD-L1発現と腫瘍組織浸潤リンパ球TILsを評価し,その臨床的意義について検討することを目的とした. 当院と兵庫県立こども病院にて腫瘍生検あるいは腫瘍切除が行われた神経芽腫患者31例を対象とした.免疫染色にて腫瘍検体のPD-L1発現を評価し,臨床病理学的因子,再発や生存率との関連を検討した.また,同じ症例においてTILsの免疫染色を行い,その浸潤程度をPD-L1陽性群と陰性群で比較した.さらに,化学療法後に切除が行われた15例に対し,化学療法前後のPD-L1発現と予後との関連において検討を行った.31例のうち,11例(35%)でPD-L1発現が陽性であった.PD-L1発現と臨床学的因子との関連では,年齢,性別,MYCN増幅の有無,再発の有無で有意な差は認められなかった.腫瘍の原発が副腎である症例に有意にPD-L1陽性が多く認められた.また,有意差は認められなかったが,PD-L1陽性例では腫瘍マーカーが高く,生存率が低くなる傾向(P=0.074)が認められた.TILsはPD-L1陽性群で少ない傾向が認められたが有意差は認められなかった.化学療法前後で検討を行った15例では化学療法前で8例,化学療法後で6例にPD-L1陽性が認められ,化学療法の有無によるPD-L1発現との関連は認められなかった.ともに陽性を示した4例では全例に再発が認められた. 今回の検討結果から,PD-L1発現は特に再発をきたすような進行神経芽腫患者において治療標的となりうる可能性が示唆された. 上記検討結果を論文報告した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
神経芽腫の生検検体からは限られたスライドしか作成できなかった。免疫染色の条件決定などで数回にわたる免疫染色が必要となるため、スライドに限りが出てしまった。今回はPD-L1、HVEMの免疫染色を行ったが、染色後その評価方法などについても検討が必要であった。不適切な染色となってしまったスライドに関しては再染色が必要となった。このような理由から他の免疫チェックポイント分子の免疫染色を行うに至らなかった。 PD-L1に関しては今回準備できた全スライドにおいて免疫染色を行い、その臨床学的因子との関連を検討することができた。また、TILsに関してもCD8、CD45の評価を行うことができた。ここから予後に関連する機序の解明を進めていく方針であったが、神経芽腫においてはTILsが非常に少ないことが認められ、今後免疫チェックポイント阻害剤の臨床応用に向かうためには、腫瘍周囲微小環境としてTILsをいかに増加させるかがポイントになると考えられた。時間的に従来予定していたin vivoでの研究にまで発展させることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今回の研究結果から神経芽腫におけるPD-L1発現と臨床学的因子との関連が検討でき、PD-L1発現は再発、予後と関連している可能性が示された。また既知のリスク因子との関連も示唆される結果であった。今後はより症例数を増やして再検討を行うことも必要と考えられる。また、今回神経芽腫において、過去の報告の通りTILsが非常に少ないことがTILsの免疫染色から確認されたため、その機序の解明が必要と考える。 免疫チェックポイント阻害剤の効果を期待するためにはTILsが多く認められることが条件となると考えられるため、今後免疫チェックポイント阻害剤を臨床応用していくにあたり、神経芽腫の腫瘍細胞周囲にいかにTILsを誘導できるかが重要なポイントとなりうる。神経芽腫にTILsが少ない機序の解明から、TILsを増やすためにどうしていくべきかを検討していくことが本研究の今後の課題であると考えている。 神経芽腫ではMYCN遺伝子の増幅が強力な予後因子となることが知られているが、MYCN遺伝子がPD-L1発現に関わっている可能性が報告されている。今後、PD-L1発現とMYCN遺伝子との関連についてもその機序の解明が望まれると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症のため国際学会への参加を断念し、国際学会への参加費として予定していた分の使用がなくなった。 また、in vivoでの実験に必要な予算が、in vivoでの実験にまで発展できなかったため、使用できなかった。 上記分の予算に使用計画との乖離があり、使用額に差が生じた。
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