本研究の目的は、効率的な肝臓再生医療を実現するために、近年開発された新術式である 二期的肝切除術(ALPPS)を応用し、体内で肝臓の一部を細胞外骨格の足場構造として利用 する新しい手法を開発することである。脱細胞化とは臓器から細胞をすべて洗浄・除去し、細胞外マトリックス(Extracellular Matrix; ECM)の骨格のみを残す技術である。脱細胞化技術の優れた点として脱細胞化後にも本来のECM構造 が残存するといった特徴がある。生体内で臓器を部分的に脱細胞化する際、大循環への脱細胞化試薬の流出が一つの課題となる。そこで初年度の目標として、ALPPSを応用し脱細胞化試薬の大循環への流出を制御し、豚生体内での部分肝脱細胞化を完了することであった。 ALPPSの応用によって脈管を確保し、細胞洗浄試薬の循環を局所で制御することにより生体内においても肝臓の部分脱細胞化が可能であった。脱細胞化に要した時間は5時間程度であり、脱細胞化された部位には病理学的に細胞成分の残存はほとんど認められなかった。また、免疫染色により脱細胞された部位にはcollagen1やcollagen4、laminin、fibronectinといったECM成分の残存が認められた。しかし、人との解剖学的な構造の違いから一部脈管の確保が困難であるといった点も認められた。今後、再細胞化および再灌流を考えた場合、一部手技の見直しが必要であると思われる。
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