膵癌細胞株を用いてROBO4の発現抑制株および強制発現株を作成し、ROBO4発現の変化による細胞株の挙動の変化について調べた実験系を利用して、癌細胞内でのROBO4の発現変化が、特にEMT関連遺伝子の発現変化にどのような影響を及ぼすかについて検討した。 具体的には、ROBO4発現抑制1株、強制発現2株についてEMT関連89遺伝子の発現定量キットにのせ、前者と後者で発現上昇/低下、あるいは低下/上昇と発現変化が相反する遺伝子群を抽出した。その結果、extra-cellular matrixに関連する候補遺伝子が複数個挙がってきたため、これらのうち、癌の転移能に関与するとの報告がある遺伝子Xについて、ROBO4との相関をタンパクレベルで解析することとした。 Gelatin zymographyなる実験系を用いて、先に使用したROBO4発現抑制1株、強制発現2株について、ROBO4の発現変化がタンパクXの発現変化を引き起こしていることが確認できた。 以上より、axon guidance geneのひとつであるROBO4の発現低下が、タンパクXの発現上昇を介して膵癌進展に寄与する可能性が考えられることについて、本研究を通して見出した。この点について2021年に学会発表を行い、その後論文作成を済ませ、現在投稿中である。 今後は、EMT進展に関与するタンパクXの発現調整機構としてROBO4を分子標的ターゲットと考えられないかという観点から、評価をすすめる必要があると考えている。
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