研究課題
研究の目的:肝臓は、大腸癌において最も多い転移臓器である。肝転移など遠隔転移を伴う大腸癌は極めて予後不良であり、対策が必要である。生体内には約1 00兆個の様々な細菌種が存在している。特に大腸では腸内細菌が癌周囲環境の一つとして重要な役割を担っており、apoptosis経路を介した化学療法に対する 耐 性に関与することが知られている。これまでにマウスモデルにおいて、原発巣だけでなく、転移巣でも腫瘍内細菌が存在することが示されているが、その生物 学的意義については未だ明らかではない。本研究では、大腸癌肝転移症例の臨床検体を用いて原発巣、転移巣における腸内細菌種とその臨床病理学的因子につい て検討し、ヒト生体内における癌組織内細菌の臨床的意義を明らかにする。さらに抗菌薬により細菌感染した腫瘍細胞中の細菌を制御することで、化学療法によ る抗腫瘍効果を高め、最終的に臨床への応用を目指す。大腸原発巣と肝転移巣の癌組織における特定細菌の存在、菌種の同定;肝切除を施行した原発 巣が大腸癌の転移性肝癌患者の検体(原発巣、転移巣) を収集し、適宜DNAを抽出。QIAamp DNA FFPE tissueを用いて、DNAを抽出し、AMI(Average Nucleotide Identity)を行い、全ゲノム配列の類似度から菌種の同 定を行う。臨床検体を用いてパラフィン固定した原発巣(大腸)と転移巣(肝臓)検体からQIAamp DNA FFPE tissueを用いて、核酸を抽出し、16SrRNAシークエ ンスとメタゲノミクス解析を行うことで、全ゲノム配列の類似度から菌種の同定を行う。具体的にはこれらの 癌組織における特定の細菌の有無と抗がん剤感受性 や、再発の有無、予後など臨床経過を踏まえた解析を行うことで、癌組織における細菌感染の臨床的意義に ついて検討する。
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European Surgical Research
巻: 62 ページ: 248~254
10.1159/000516922