研究課題/領域番号 |
19K18085
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
市原 もも子 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (50835246)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 食道癌 / 胆汁酸 / 扁平上皮癌 / アルコール |
研究実績の概要 |
臨床的に、食道扁平上皮癌の発生と胆汁逆流の関連性があるかを検討するために、当院で、食道癌の診断にて2014年~2015年に食道切除術をうけた95名の患者の術前の内視鏡検査所見を見直した。食道裂孔ヘルニアを有する症例が約58%を占めており、そのうち、GradeIIIは30%、GradeIVの裂孔ヘルニアが28%を占めていた。食道裂孔ヘルニアとヨード染色のまだら不染とお関連性を検討すると、裂孔ヘルニア症例の63%でヨード染色のまだら不染が存在していた。一方、食道裂孔ヘルニアがない症例では、ヨード染色のまだら不染は38%にとどまっており、食道裂孔ヘルニアの存在とヨード染色のまだら不染の存在との間に有意な相関を認めた。 また、in vitroで、食道正常上皮に胆汁酸およびアルコールを暴露する実験系の確立のために、Deoxycholic Acid(DCA)およびエタノールの濃度をふって48時間暴露し、cell viabilityおよび細胞形態を検討した。その結果、単剤ではエタノールは1%、DCAは50uMが至適濃度であることが分かった。また、DCAとエタノールの併用では、エタノール0.5%+DCA50uMが至適条件であることが分かった。また、正常食道上皮のオルガノイド作成の条件設定が完了し、再現性をもってオルガノイドを作成できる状態であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胆汁逆流と扁平上皮癌発癌の関連性を示唆する臨床データを確認した。 in vitro実験のための条件設定が完了した。
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今後の研究の推進方策 |
アルコール、胆汁酸の単剤投与および併用が食道上皮に及ぼす影響をまずは2次元で評価する。胆汁酸には2次胆汁酸であるデオキシコール酸(DCA)を使用し、アルコールおよびDCAを異なるpHコンディション下で暴露し、Notchおよび上皮マーカーの発現およびDNA損傷の有無をWestern blottingおよびComet Assayで検証する。続いてOrganotypic cultureを用いて胆汁酸およびアルコールの暴露による浸透性、DNA損傷、硫酸コレステロールの治療効果を検証する。コラーゲン上で多層構造を形成したケラチノサイトの角質層の上層から胆汁酸およびアルコールを暴露する。暴露後に切片を作成し、深層に位置する細胞の遺伝子発現、DNA損傷、構造変化をHE染色およびIHC染色にて評価する。また角質層のみを剥離し、角質層に含まれる硫酸コレステロールの定量も行う。硫酸コレステロールによる治療を行った群についても同様の評価を行い、治療効果について検証する。次に内視鏡的に採取した患者由来の食道上皮からオルガノイドを作成し、アルコールおよび胆汁酸の暴露し、実際の食道癌症例でアルコールおよび胆汁酸が発現の要因であることを実証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
アルコール、胆汁酸の単剤投与および併用が食道上皮に及ぼす影響をまずは2次元で評価する。続いてOrganotypic cultureを用いて胆汁酸およびアルコールの暴露による浸透性、DNA損傷、硫酸コレステロールの治療効果を検証する。硫酸コレステロールによる治療を行った群についても治療効果について検証する。次に内視鏡的に採取した患者由来の食道上皮からオルガノイドを作成し、アルコールおよび胆汁酸の暴露し、実際の食道癌症例でアルコールおよび胆汁酸が発現の要因であることを実証する。
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