【背景】切除不能進行・再発GISTに対する分子標的治療薬イマチニブは、極めて有効な治療薬である。一方でイマチニブ奏効中の症例に対しイマチニブを中止すると、全例で再増大をきたすということが欧州での臨床試験の結果、明らかになり効果の続く限りの一生涯の治療と位置付けられている。イマチニブが奏功中病変の切除検体において、大部分が硝子化した組織の中に少数のviableな細胞がクラスターをなして遺残している組織像を認め、この遺残細胞がイマチニブ中止後の再発の根源となっている可能性が示唆される。 【目的】奏効症例におけるイマチニブ治療中止を可能とすべく、イマチニブ投与後の遺残細胞を標的とした治療を開発することを目的とした。 【結果】GIST-T1細胞株に対してイマチニブ2μMを9日間投与の後を遺残細胞と定義をし、解析を行った。メタボローム解析を含むin vitro解析の結果、遺残細胞ではGLUT1の発現低下、Glucose-uptakeの低下など糖代謝の変容が見られ、抗酸化物質グルタチオンの細胞内濃度低下がみられた。その結果、鉄関連新規細胞死「フェロトーシス」の誘導剤であるGPX4阻害剤に対し、親株と比して有意に高い感受性を示した。またその効果は、鉄のキレート剤投与により減弱を示した。ヌードマウス皮下腫瘍移植モデルを用いた検討において、イマチニブ投与後のGPX4阻害剤投与によりイマチニブ中止後の再増大抑制効果を確認した。肺がん細胞株に対するゲフェチニブでも同様の結果が認められた。 【まとめ】分子標的治療薬遺残細胞に対するフェロトーシス誘導は、有効な治療選択である可能性が示唆され、臨床応用へ向けての開発が期待される。
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