腹膜播種は消化器癌に高頻度に認められる予後不良の転移形式であり、病態解明と治療の確立が求められている。大網上のmilky spot は、腹膜播種の癌細胞の足場形成部であると考えられるが、同時に二次リンパ組織として腹腔内抗腫瘍免疫の活性化の場であるという二面性を持つ。本研究は、milky spotの特徴に着目し、腹膜播種に対する抗腫瘍免疫破綻の機序を解明する。同時に、Natural Killer T(NKT)細胞活性化ワクチンベクターを用いて、抗腫瘍効果を発揮する腫瘍反応性T細胞の誘導による治療を確立し、腹腔内CD8+T細胞の効率的な誘導機構を解明する研究である。 本研究は、皮下接種型腫瘍に対し著効するNKT細胞ワクチンベクター免疫療法に抵抗性を示す難治性腹膜播種に対し、腫瘍反応性T細胞を成立させ、腹膜播種の病態制御を試みる新規癌免疫療法のモデルを確立することが目的である。ますは、ワクチンベクターの作成方法と精度の向上を行うことが第一である。次に、この際に機能する腹腔内CD8+T細胞の誘導機構を明らかにすることである。リンパ組織としてCXCL13を分泌し、CXCR5陽性細胞を誘導することは、この腫瘍反応性T細胞の誘導には欠かせいない条件で、必要条件を満たす。このため、腫瘍反応性腹腔内CD8+T細胞はどのような性質と表現型を持つのか、通常の腫瘍モデルの概念を踏襲しながら、milky spotのリンパ様構造を解析し、病態の解明を試みるものである。腫瘍反応性腹腔内T細胞の解析をこのモデルのみならず、手術時ヒトの腹腔洗浄液を採取して、明らかにすることが必要であると考えている。
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