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2019 年度 実施状況報告書

蛍光X線分析による銅の分布分析と銅輸送体がもたらす白金製剤抵抗性機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K18091
研究機関九州大学

研究代表者

堀岡 宏平  九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (10783699)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2021-03-31
キーワード大腸癌 / 白金製剤 / 治療抵抗性 / oxaliplatin / 蛍光X線分析 / SPring-8 / 銅輸送体
研究実績の概要

Oxaliplatinは大腸癌治療における主要薬剤であるが、十分な奏功率は得られておらず、薬剤耐性が問題となっている。本研究では、蛍光X線分析の手法を用いて薬剤の腫瘍内動態や銅輸送体の役割を解明することで、治療反応性の予測や耐性獲得機序を明らかにすることを目的とする。
当研究室ではこれまでに、工学領域で用いられる蛍光X線分析(SPring-8)という手法を用いて、ヒト大腸癌組織における白金製剤の分布を分析してきた。その結果、oxaliplatinを含む術前化学療法を施行し、その後外科的切除を行った30症例において、治療効果の高い場合には腫瘍の変性部分に、一方、治療効果の乏しい症例においては腫瘍内の間質部分に白金が集積していることが明らかとなっている。さらにヒトの大腸癌切除組織において、白金と共に他の金属についても蛍光X線分析を用いて分布を調査したところ、治療効果の程度によって銅の分布のみに違いが見られた。同様に、銅の輸送体であるCTR1/CTR2やATP7A/ATP7Bについても、治療効果によって発現に違いが見られることがわかった。これらの結果から、腫瘍組織における銅輸送体の発現ないし機能的な違いが、大腸癌のoxaliplatinをはじめとする白金製剤への耐性獲得機序に大きく関わっていることが示唆された。白金製剤は大腸癌においてkey drugとなる重要な薬剤であるが、その効果が乏しい場合には思うような予後改善が得られないのが現状である。本研究結果から、銅輸送体を標的とすることで、白金製剤への耐性を克服できる可能性があると考えられる。今後は、すでに複数樹立しているoxaliplatin耐性株を含めた大腸癌細胞株や、大腸癌オルガノイドを用いて、ヒトの大腸癌組織の微小環境を再現した3Dモデルやマウスモデルを作成し、銅輸送体とoxaliplatin耐性の関連を明らかにする。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ヒト大腸癌組織における白金、銅、および銅輸送体の分布の蛍光X線分析は順調に進み、in vitro/in vivo実験を開始している。

今後の研究の推進方策

蛍光X線分析には時間と労力を要し、これまでに分析を行った症例数がやや少ないため、in vitro/in vivo実験と並行してさらなる症例の集積を進め、分析精度の向上を図る。
遺伝子レベルの解析やin vivo実験においては、患者由来組織を用いたPDXモデルや、シングルセル解析などの新たな手法も積極的に取り入れ、実用化の可能性を高める。

次年度使用額が生じた理由

研究はおおむね順調に進んでいて、資金を有効に使用できたため。
今後行う予定のシングルセル解析の試薬類、受託解析費用に使用する予定である。

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公開日: 2021-01-27  

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