研究課題
肝癌に対して肝切除を行った症例について、6例から癌部と非癌部の線維芽細胞の抽出に成功した。それぞれ抽出した細胞については、分離培養を行った。癌関連線維芽細胞(CAF)と非癌部線維芽細胞(NF)の培養上清を抽出し、試薬を用いてエクソソームを抽出した。CAFとNFから抽出したエクソソームをHCC細胞株に添加したところ、CAF由来エクソソームによる刺激のほうが有意に浸潤能や遊走能を上昇させた。この結果について検証するために、CAF由来とNF由来の上清からエクソソームを除去してHCC細胞株に添加して比較したところ、浸潤能や遊走能に有意差は認めなかった。これによりCAF由来のエクソソームによる刺激が重要であることを確認した。エクソソームをPKH26で標識してHCC細胞株に添加したところ、CAF由来もNF由来もいずれも細胞株内に取り込まれていることを確認された。エクソソーム内のmiRNAについてアレイで発現量の比較を行ったところ、CAFではmiR150-3pの発言が有意に低下していることが明らかとなった。miR150-3pを強制発現したエクソソームの添加により、肝癌細胞株の遊走能と浸潤能が抑制されることを確認し、エクソソームに含まれるmiR150-3pが肝癌細胞を抑制することを明らかにした。次に、肝癌患者の臨床サンプルを用いた検討では、肝癌組織においてmiR150-3pの発現が低い症例が再発リスクが高く、末梢血中のmiR150-3pが低い症例がより予後が不良であることが確認され、癌関連線維芽細胞におけるmiR150-3pの発現低下が肝癌の進展に深くかかわっていることを明らかにした。以上の研究成果について、European Journal of Surgical Oncology誌に報告した。
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European Journal of Surgical Oncology
巻: 47 ページ: 384~393
10.1016/j.ejso.2020.08.002