2021年度まではGirdinのノックダウンによる膵癌細胞株の機能評価を中心におこなった.2022年度では,Girdinの抗活性物質としてフラボノイドのスクテラリンを投与した実験を中心におこなった.スクテラリン投与による膵癌細胞株の遊走能は,Boyden double chamber法では有意な結果が得られなかったが,一方で,Wound Healing assayでは,スクテラリン投与群において,EGF刺激下で有意に低下することを確認した.この理由として,細胞間における相互作用により,移動方向の極性が関与している可能性が推察された.また,血管新生能についてもスクテラリン投与による影響を検証したところ,Girdinノックダウンでは血管新生因子VEGF-Aの発現および産生が低下しているのに対して,スクテラリン投与では,VEGF-Aの発現や産生に影響を与えなかった.これには,スクテラリンが抑制するGirdnの機能部位とは異なる経路で,Girdinが血管新生に関与している可能性を考えた. 一方,スクテラリンによるGirdinの抑制についてはリン酸化抑制を仮説として考え,Western blottingをおこなった.リン酸化Girdin(pGirdin)抗体のうち,pGirdin(Tyr-1746)を用いた際は,Total-Girdinに比してpGirdinは,EGF刺激下で発現亢進する一方,スクテラリン投与では,EGF刺激下でも有意にpGirdinの発現低下を認めた.
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