研究実績の概要 |
赤血球由来の細胞外小胞体(erythrocyte-derived microvesicles,EDM)は癌細胞に取り込まれることで、悪性形質を変化させている可能性があると考え、癌患者由来EDMを取り込ませた胃癌細胞株、健 常者由来EDMを取り込ませた胃癌細胞株、未処理の胃癌細胞株からRNAを抽出し、マイクロアレイ解析(アジレント社)を行った。癌患者由来EDMの取り込みで発 現が亢進した候補分子について、他の癌患者由来EDMでvalidation studyを行い、同様の変化を認めたRPS15A, EIF1の2分子に注目した。これらはすでに他癌種で early translationや血管新生への関与(RPS15A)やAgo2やmiR-451のbiogenesisに関与(EIF1)することが報告されている。しかしながら、これら2つの分子の変化について、胃癌原発巣で高発現していることが確認できず、EDM中での高発現の理由が不明であった。EDMサンプル自体が非常に貴重なものであるため、この2つの分子に着目した検討は中止とし、今度はこれらの細胞機能的変化に、赤血球中に大量に 含まれるmiRNAが関与しているとの仮説を立て、EDMから抽出したRNAを用いたmicroarray解析(東レ社、3Dgene)を行ったところ、microRNA-3621が健常人に比べ高く発現していた。このmiRを強制発現させた胃癌細胞株の細胞機能アッセイにて、EDM添加による機能アッセイと同様の結果が得られたため、このmicroRNAが胃癌悪性度獲得の原因の一つと考えている。
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