研究実績の概要 |
VWFは血管内皮細胞で産生され,UL-VWFマルチマーとして血中に放出される.一方で肝切除,特にPringle法による虚血再灌流障害の主要ターゲットが血管内皮細胞であることが知られている. 現在までの肝切除後のヒト血清を用いた検討では,ADAMTS13活性は術後有意に低下し(p<0.001), VWF抗原量は術後有意に増加した(p<0.001).UL-VWFMマルチマーは術前値0.2%(0.0-7.8)から術後7日目に4.2%(0.1-16.3)と有意に増加した(p<0.001).多変量解析では,Pringle時間が術後UL-VWFマルチマー出現に関する独立した規定因子であった(p=0.043).さらにUL-VWFマルチマーindexは,Pringle時間と正の相関を示した(r=0.444,p=0.017).以上の結果から,UL-VWFマルチマーとPringle法による虚血再灌流障害との関連が示唆された.
Pringle法による虚血再灌流障害が病的血栓の原因とされるUL-VWFマルチマーを増悪させる因子であるとの観点から,実際の肝切除法に近いモデルを作成.C57BL/6J雄生8週齢マウスにおいて,全肝流入血遮断下(遮断時間30分)に30%肝切除を行う.Pringle法による影響を調べるために,Pringleなしの30%肝切除のみを行うグループも作成し,さらに術後にrecombinant ADAMTS13投与を行う群と投与しない群に分け,切除前後のADAMTS13活性,VWF抗原,UL-VWFマルチマー発現,GOT,GPT, T-Bil値を測定するとともに,肝における微小循環を組織学的に検証し,術中Pringle法による虚血再灌流障害に対するADAMTS13補充の治療効果を検討した.
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