研究課題/領域番号 |
19K18102
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
石田 隆 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師(非常勤) (90573395)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 潰瘍性大腸炎 / 大腸癌 / 腸内細菌 |
研究実績の概要 |
炎症性腸疾患の1つである潰瘍性大腸炎の罹患率は右肩上がりであり、最近では特に抗TNF-α抗体薬に代表される内科的治療の向上に伴い、寛解導入率が向上するも、長期罹患後の癌化が問題となっている。炎症性発癌の標準治療は大腸全摘であり、その後の患者のQOLは極めて低下する。この発癌のメカニズムについてはまだまだ不明な点が多いが、腸内細菌のdisbiosisが一因である可能性が考えられている。 本研究では、潰瘍性大腸炎関連大腸癌発生における腸内細菌と代謝産物の関連について、マウスモデルを用いて検討し、さらに腸内細菌をターゲットとしたバイオマーカーや治療方法の開発を目指すことを目的としている。 まずは、教室で経験のある炎症性発がんモデルマウスの作成に取り組んでいる。具体的には、アゾキシメタン2.5mg/kgを6-8週齢のC57Bl/6J雄マウスに腹腔内投与、その後1週間2.5%デキストラン硫酸ナトリウム水を自由飲水させ、その後通常飲水で2週間飼育する3週間を1サイクルとし、これを3サイクル行った後に発がんの状態を確認する。ほぼすべてのマウスで大腸遠位に多発腫瘍が確認できた。これをモデルとして20匹を目標に炎症性発がんマウスを作成し、腸内容の採取や腸管の摘出などを行い、腸内細菌や便中の代謝産物、腫瘍の病理組織検索などを進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の人事異動に伴い、研究体制の見直しが必要となり、その移行期間に一時的に研究を中断せざるを得ない状況となったために、研究実施計画はやや遅れている。また、COVID-19感染症対応のために年度替わりの期間も少し研究計画を見直す必要が生じており、現状はモデルマウスの作成の可能な限りの継続、検体の採取に注力し、その後環境の改善に応じて少しずつ分子生物学的な解析などを推進していく方向である。現状では、ほかのモデルマウスの購入も困難になっており、経過をみてこちらも進めていく方針である。
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今後の研究の推進方策 |
当教室ではこれまでに、炎症性発癌モデルマウスや肥満背景のポリープ発癌モデルマウスを作製し、これを用いた他の癌の研究も行ってきた。これらの経験を活かし、現在、様々なモデルマウスの作成やメタゲノム解析の準備、腫瘍発現の評価法の確立に向けて、準備を進めている。 具体的には、糖尿病肥満モデルマウスであるKKAyマウスにアゾキシメタンを投与する肥満関連大腸腫瘍モデルマウスを用いて同様の腸内細菌や代謝産物の解析を進める。このモデルはかなり時間がかかる。つがい的には6-8週齢の雄マウスを購入し、その後1週間ケージで慣らした後、1週間ごとに6回アゾキシメタンを腹腔内投与する。そして26-28週齢でsacrificeし、検体を採取する。 また、APCmin/+マウスは小腸および大腸の多発腫瘍モデルマウスであり、これを購入し同様に便中の腸内細菌及び代謝産物の解析を進める。ここでこれら3つのタイプのモデルマウスから得られた結果をもとに、具体的に大腸がん発生の異なる経路それぞれに特徴的な腸内細菌や代謝産物の検索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究責任者の人事異動に伴い、研究体制の見直しが必要となり、研究が予定通り進まなかったために、一部繰越金が発生している。特に2020年3月からはCOVID-19感染拡大に対する研究室対応のために一部の研究業務が制限され、それによる影響は次年度にも続くことが予想される。繰越金は次年度分と合わせて引き続き、モデルマウスの作成やメタゲノム解析などの研究に使用していく予定である。
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