研究課題/領域番号 |
19K18109
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
山口 貴久 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (50781142)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 胃癌腹膜播種 / 癌免疫微小環境 / CD8陽性T細胞 / M2マクロファージ |
研究実績の概要 |
癌微小環境における免疫病態は様々な癌種において重要な役割を担うとされるが、胃癌腹膜播種における腹腔内の免疫状態に関して報告は少なく、未知の部分が多いため、その解明のために研究を推進している。ヒトの手術検体より胃癌腹膜播種巣を採取し免疫染色を行ったところ、腫瘍部のCD8高浸潤症例では予後良好であった。一方でCD33陽性MDSC高浸潤症例では予後不良であることが判明した。TregやNK細胞の集積と予後との関連は認めなかった。さらに、化学療法を施行している患者腹水をフローサイトメトリーにて検討したところ、化学療法前後では、腹水中のCD8陽性T細胞が多くなる一方で、腫瘍関連マクロファージは経時的に減少傾向にあることが分かった。 またin vivoの検討を施行した。免疫担当細胞の評価を行うには非ヌードマウスより担癌マウスを作成し、免疫機能を解析する必要があるが、これまでは胃癌腹膜播種の非ヌードマウスは存在していなかった。そこでマウス由来胃癌細胞株とマウス由来線維芽細胞株を共培養しマウスの腹腔内投与を行うことで、腹膜播種モデルを作成した。比較群としてマウス由来胃癌細胞株を単独投与した。腹膜播種モデルは比較群と比べて、腹膜播種組織中のCD8陽性T細胞が低浸潤である一方で、腫瘍関連マクロファージが高浸潤を認めていた。これはヒトの腹膜播種の癌微小環境と非常に類似しており、腹膜播種の免疫環境において癌関連線維芽細胞の重要性が示唆された。現在このモデルを使用し、PD-1抗体や抗癌剤投与時の免疫環境の解明を行うための実験を遂行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腹膜播種の組織標本を使用し、ヒトの生体内での癌免疫微小環境の解明を行った。また腹膜播種モデルを作成し、腫瘍部での免疫環境の解析を施行し、生体内と類似しており、免疫環境を解析するモデルに適していることを証明した。 現在このモデルを使用し、PD-1抗体等の薬剤投与における、免疫環境の変化を解析している。研究の進捗状況としてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
腹膜播種モデルを使用し、薬剤投与の実験を施行し、腫瘍部での免疫環境の変化を確認する。 またin vitroにて、癌関連線維芽細胞や癌細胞とTリンパ球の共培養における、Tリンパ球の増殖能や機能を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
in vitroの実験において、T細胞抑制実験を行う予定であるが、同実験の物品購入を次年度にまわしたため、次年度使用額が生じた。またマウスを使用した薬剤投与実験の一部を次年度予定となり、次年度使用額が生じた。 今後はin vitroのT細胞を使用した実験、またin vivoにてマウスへの薬剤投与による免疫微小環境の解析を中心に実験を施行する予定である。
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