研究実績の概要 |
当科で切除された177例(1998-2014年)のHCCから得られた臨床情報と切除検体を用いた。当科のHCC症例はHBV 41例(23%)、HCV 106例(60%)、非BCが30例(17%)だった。切除標本の腫瘍部・非腫瘍部で全RNAにおける m6A定量解析では有意差を認めなかった(P=0.79)。予後解析の結果、非腫瘍部のm6Aメチル化高低と予後に関連を認めなかったが腫瘍部のm6Aメチル化高値は予後不良なRFSとOSに関係していた(RFS, MST, 31 vs 14m, P=0.13; OS, NA vs 32, P=0.009)。 続いてm6Aメチル化関連遺伝子について、公共遺伝子データベースであるTCGAのデータを用い、HCC腫瘍部と非腫瘍部での発現状況を調べると、m6A脱メチル化に関与するALKBH5とFTOの発現が腫瘍部で有意に低くなっていた(P<0.001, P=0.02)。 当科のHCCの腫瘍部・非腫瘍部での遺伝子発現を定量PCRで解析すると、ALKBH5、FTOともに腫瘍部で有意に発現が低かった(ともにP<0.001)。ALKBH5発現について予後解析を行うと,腫瘍部の発現低値群のRFSは有意に不良だった(P=0.003)。さらに非腫瘍部の発現低値群は高値群に比べて有意に予後不良なRFSであり(MST, 16 vs 38 m, P=0.001)、OSでも有意差は認めないものの予後不良の傾向だった(MST NA vs NA, P=0.09)。ALKBH5の高低で臨床病理学的所見を比較すると年齢65歳未満とステージIII以上の割合がALKBH5低発現群で有意に高かった。さらにCox比例ハザードモデルによる単変量/多変量解析では非腫瘍部のALKBH5発現低値は静脈浸潤と並び、独立した有意な予後因子として抽出された(HR, 1.9, P=0.004)。
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