研究課題/領域番号 |
19K18111
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
種村 彰洋 三重大学, 医学系研究科, 講師 (80626242)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 血栓性微小血管障害症 / TMA / ADAMTS13 / 血小板 |
研究実績の概要 |
動物実験に先立ち、肝移植を行った症例についての血小板の推移、von Willebrand factor (vWF)、A disintegrin and metalloprotease with thrombospondin type I domain 13 (ADAMTS13)との関係について再度臨床データの見直しを行った。術後7日目までは血小板値は10万以下となる症例が多く、また血小板値が低い症例ほど周術期死亡が多い結果であった。一方で微小血管内でvon Willebrand factor (vWF)が血小板と重合体を形成することで微小血栓が生じ、臓器障害へと至ると言われており、vWFについても術後の推移を見てみると、上昇が認められた。さらにvWFの切断酵素であるADAMTS13については術直後から低下が認められていた。つまり、肝移植後は多くの症例で血栓性微小血管障害症(thrombotic microangiopathy: TMA)が起こっていると考えられる。 一方、ラットを用いた実験において上記現象の再現、現象の解明を行うため、まずはモデルの作成にとりかかっている。移植モデルを行う前段階として、肝虚血再灌流モデルを試みている。特に部分肝移植モデルを想定したモデルとして、70%肝切除を行ったのちに虚血再灌流(IRI)を行うモデルを作成中である。IRIの時間を変化させ、肝障害の度合いを調べるとともに、致死的とならない限界の時間としては20分が妥当と思われた。IRI後の組織学的変化を観察したところ、個体にばらつきはあるものの、類洞の拡張、局所的な壊死などが観察されたものの、血栓の評価については困難であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床データでの肝移植後TMAの存在と、その際の血小板、vWF, ADAMTS13の動態についてはおおかたの把握ができた。現在はIRIのモデル作成に取り掛かっているところであるが、モデルの安定的な作成に時間を要している。また、必要なアッセイについても取り掛かり始めたところであり、今後、データの安定的な測定にも手技の習熟が必要であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度はIRIモデルの手技の安定化と、術後の血小板の推移、vWF, ADAMTS13値の変化について、ヒトでの所見と同様な動態を示すかどうかについて検討する。その上で、移植後の肝の組織学的変化、特に肝の微小循環である、類洞内の変化、類洞内皮障害、微小血栓の形成について観察することを目標とする。また、もしADAMTS13の低下によるTMAの病態が示唆されれば、遺伝子組み替えADAMTS13を投与することによる治療効果についても検討を行う予定である。 肝移植モデルについてはさらなる手術手技の修練が必要であり、次年度に行うことを目標とする。
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