研究実績の概要 |
昨年、マウス肝臓IRIモデルにおいて、遺伝子組み換えADAMTS13を静注投与し、肝障害を軽減できる効果を検討したものの、予想に反して有効な肝保護作用は確認できなかった。そこで、同じく抗凝固因子の1つである、Xa阻害薬であるエドキサバン投与による効果を検討した。 エドキサバンを経口投与し、60分後にマウス肝の70%の肝を60分間クランプするモデルを作成し、薬剤を投与しないコントロールと比較検討した。肝逸脱酵素(AST, ALT)を測定したところ、コントロール群、投与群でそれぞれAST: 4613 (3303-5452), 572 (379-701) IU/L (p=0.002)、ALT: 2087 (1676-2718), 313 (170-375) IU/L (p=0.002)であり、有意な肝逸脱酵素の減少が得られた。肝組織を比較検討したところ、コントロール群では類洞の鬱血、肝細胞癌の変性、壊死などがグリソン領域、中心静脈領域にみられたものの、投与群ではそれらの組織学的肝障害が軽度であった。肝組織における抗凝固作用を評価するため、Western blot解析により組織中のフィブリンを測定した。コントロール群に比べ、投与群では有意にフィブリン形成が抑制されていた (0.95 (0.43-1.36) vs 0.28 (0.25-0.36), p=0.026)。抗炎症作用も評価するため、炎症性サイトカインとして血中のTNF-α、IL-6を測定した。コントロール群、投与群でそれぞれ、TNF-α/β-actin: 1.2 (0.8-1.3), 0.2 (0.1-0.2) (p=0.002)、IL-6/β-actin: 0.43 (0.18-1.66), 0.09 (0.07-0.15) (p=0.041)であり、投与群で有意に炎症性サイトカインの減少が得られた。
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