研究課題/領域番号 |
19K18113
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山本 慧 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (90835240)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 膵癌 / EMT / HDAC |
研究実績の概要 |
膵癌では上皮間葉転換(EMT)を介して浸潤・転移を引き起こすが、EMTにはエピジェネティック機構の関与が考えられる。また炎症がEMTに関与することから、膵癌においては炎症性サイトカインがエピジェネティック機構を介してEMTを引き起こしている可能性が想定される。本研究では、エピジェネティック機構の一つであるヒストン脱アセチル化酵素1(HDAC1)に着目し、HDAC1発現が膵癌のEMTに関与するかを調べ,HDAC1と関連する炎症性マーカーの有無を検討することを目的とした。 平成31年/令和元年度には,HDAC1発現とEMTの関係の評価し,HDAC1発現に関与する炎症性サイトカインの同定し,同定した炎症性サイトカインのHDAC1、EMTへの影響の検討する予定であった, まず,当教室で所有する複数の膵癌細胞株を用いてHDAC1発現を調べ、EMTとの関与について EMTに関連する浸潤能の変化、EMT関連遺伝子/蛋白の変化を評価した.HDAC1の発現が高い細胞株では上皮系マーカー蛋白の発現が低く,EMT関連蛋白の髙値が認められ,浸潤能も高いことが示され,仮説通りの結果であった. そこで,膵癌切除症例の内、特にHDAC1高発現/低発現であった症例の凍結保存している背景膵から蛋白抽出を行い、HDAC1の発現の低かったBxPC3やPanc1への添加実験を予定したが,仮説とは違い,保存組織からの蛋白抽出ではHDAC1の発現変化を来さなかった.賦活する炎症性サイトカインを切除標本中に十分に含まれていない可能性や保存中に失活してしまった可能性が考えられた。そこで現在切除時に標本から血液を採取し,炎症性サイトカインのサイトカインアレイを行いサイトカインの検証を行った上で転化実験を行う方針とした.これにより症例間での血清がHDAC1発現へ及ぼす影響について検討する予定とし,現在血清を前向きに集積している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画で予定していた,臨床サンプルを用いた炎症性サイトカインの検証実験において,仮説と異なる結果となったため,若干の遅れをきたしている.もともとの計画では保存組織からの蛋白抽出で関連する炎症性サイトカインの同定を行う予定であったが,抽出液の添加実験では有望な結果が出ず,賦活する炎症性サイトカインを切除標本中に十分に含まれていない可能性や保存中に失活してしまった可能性が考えられた。そこで対象とする臨床サンプルを変更することとし,現在切除時に標本から血液を採取して炎症性サイトカインを同定する方針へと変更した.より新鮮で,腫瘍からの血流が多く含まれるため,この変更によって有望な結果が得られる可能性は高い.しかし一方で前向きに血液採取をして行く必要があり,十分なサンプル数を集めて結果を出すために若干の遅れをきたしている状況である.
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今後の研究の推進方策 |
膵癌のHDAC1の発現と炎症性サイトカインの関係を同定した後の予定計画に変更はない.現在の臨床サンプルから炎症性サイトカインのHDAC1への影響を確かめることができれば,その中から最も関係する炎症性サイトカインを同定し,マウス実験を介して新規治療標的となりうるかの検討や,患者血清中の発現からバイオマーカーとなり得るかなどの検討を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画で予定していた,臨床サンプルを用いた炎症性サイトカインの検証実験において,仮説と異なる結果となったため,もともとの計画で予定していた炎症性サイトカインのサイトカインアレイや抽出液の添加実験へ進めず,予定よりも金額を繰り越す結果となった.今後サンプルを変更して集積し,予定金額の中で実験計画を立てて遂行していく.
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