研究課題/領域番号 |
19K18114
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
東口 公哉 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (80804450)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 膵癌 / 腫瘍免疫 / 抗原特異的T細胞 / 細胞障害性T細胞 / 次世代型フローサイトメーター / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
抗原特異的T細胞免疫反応を解析する実験系として、これまでに2つのProtocolをCMV pp65刺激モデルで確立しており、そのうち抗原特異的T細胞免疫反応の検出感度が高いProtocolについては、前年度までに既報の癌抗原ペプチドで実際に膵癌症例から採取した末梢血単核細胞(PBMC)を刺激した際に生じる抗原特異的T細胞免疫反応を観察可能であることが検証できていた。そこで本年度は、さらに数例の臨床サンプルを用いてT細胞機能解析用のPanelを最適化したうえで、これまでに採取した臨床サンプルに対する本解析を開始した。 現在までに、術前治療前、術前治療後、術後など、さまざまな時相の膵癌症例から採取したPBMCを、一つ目の実験Protocolにて、WT-1やCEAなどの4種の膵癌抗原ペプチドで刺激した際に生じる癌抗原特異的T細胞免疫反応の実験データを取得できており、これらのデータがそれぞれのサンプルの臨床学的因子との関連を含めた解析が進行中である。 一方、もう一つのT細胞受容体(TCR)刺激依存的なCD8 T細胞反応(産生サイトカインや免疫チェックポイント分子の発現変化)をex vivoで解析可能なProtocolについても、同様に臨床サンプルを用いてT細胞機能解析用Panel(前者のProtocolのPanelとは解析対象が一部異なる)の染色性を最終調整中である。 さらにこれらと並行して、膵癌患者と非担癌者のベースラインとしてのCD8T細胞分画に違いがあるかを検討すべく、さらなるサンプル収集も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
末梢血中に存在する癌抗原特異的T細胞は非常に稀なT細胞細胞分画と考えられ、T細胞受容体(TCR)刺激依存的なCD8 T細胞反応をex vivoで解析する後者のProtocolでは、微小な癌抗原特異的T細胞免疫反応を観察することにやや難渋している。
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今後の研究の推進方策 |
前者のProtocolで得られた実験データについては、未治療状態、化学療法前後、術後などの状況ごとに分けて解析を行い、腫瘍マーカーや化学療法による腫瘍の縮小率などの膵癌の病態を反映するような臨床学的因子との関連についてさらに検討していく。 また、後者のProtocolによってT細胞受容体(TCR)刺激依存的な癌抗原特異的CD8 T細胞反応をex vivoで解析すべく、T細胞機能解析用Panelの染色性向上のみならず、1回の実験あたりに使用するPBMC数や抗原刺激の方法など、実験のProtocol自体に改善すべきところがないかについても検討する。 一方で、そもそも担癌患者の末梢血中のCD8T細胞分画は、非担癌者のものと異なっているか、抗原未刺激状態でも比較しておくことが担癌患者におけるCD8T細胞免疫応答のメカニズムを知るうえで重要と考えられるため、これらを比較する実験も追加で行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、実験と研究の進捗が遅れているため
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