研究実績の概要 |
60例の肝癌(肝内胆管癌切除例、2000年3月-2017年10月、九州大学消化器総合外科)摘出標本から得られたパラフィン包埋切片を用いて血管新生やApelinを染色し、臨床データから得られたサルコペニアとの関連を検討した。 非癌部の血管組織でApelinと血管内皮面積(CD34)を比較したところ、Apelin高発現群(n=29)で血管内皮面積も大きいことが証明された(p=0.03)。Apelin高発現群(n=29)と低発現群(n=31)では、高発現群で年齢が若い傾向にあり(62歳vs67歳、p=0.07)、腫瘍マーカー(CEA)が有意に低く(3.19vs7.11. p=0.04)、腫瘍の局在が肝門部よりも末梢領域に多かった(93%vs70%, p=0.01)が、全生存(58% vs 51%,p=0.62)や無再発生存(49% vs 38%, p=0.19)など、長期生存に差はなかった。 次に癌部におけるApelinの発現を免疫組織化学染色で同様に検討し臨床背景との関係を比較したが、年齢や性別、BMI、血液検査所見、腫瘍マーカー、腫瘍因子(腫瘍径や浸潤の有無など)などいずれも差は認めなかった。次に歩行速度や握力、CTでの骨格筋面積測定からサルコペニアの有無を検討し腫瘍内Apelinの発現の過多を検討したところ、サルコペニア群(n=12)で有意に腫瘍内Apelinの発現が低かった(p=0.008)。 高齢者においてApelin発現が低いことはNat Med 2018の既報に合致するで、さらにサルコペニア群でApelin発現が低いことも確認できた。肝癌におけるサルコペニアとApelinの発現の関係は新たな知見である。
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