研究課題/領域番号 |
19K18123
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
栗原 健 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (50823598)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | B型肝炎 / nikase-Cas9 / pair nicking |
研究実績の概要 |
B型肝炎ウイルスゲノムを標的するにあたりジェノタイプ間で保存されたHBc蛋白をコードする領域に対して2つのsgRNAをデザインした。デザインしたsgRNAによって認識される宿主細胞における非ターゲット配列への変異導入のリスクを検討するために、CRISPRdirectを用いて宿主細胞において予想される非ターゲット配列を予測し、Deep sequence法を用いて予測した非ターゲット配変異導入の頻度を評価したところ、いずれの場合においても非ターゲット配列への変異導入は検出限界以下であった。 次にCas9蛋白とデザインしたsgRNA によって標的としたB型肝炎ウイルスの複製に対する効果を検討した。nickase-Cas9蛋白とsgRNA単独もしくはペアとの供発現によるB型肝炎ウイルスの複製に対する効果を評価するために、細胞内でHBVウイルスを複製しうるHepG2.2.15.7細胞にnickase-Cas9蛋白とsgRNA-HBc-1とsgRNA-HBc-2をレンチウイルスベクターを用いて遺伝子導入した。Surveyor法によってターゲット配列における変異導入を評価したところ、nickase-Cas9蛋白とsgRNA-HBc-1とsgRNA-HBc-2をペアで発現させた細胞では変異導入が見られたが、いずれかのsgRNAとの供発現においてはターゲット配列に変異導入は見られなかった。細胞内のウイルス蛋白であるHBc蛋白量およびウイルス量をウエスタンブロット法およびq-PCR法にて評価したところ、nickase-Cas9蛋白とペアのsgRNAの供発現によってHepG2.2.15.7細胞内のHBc蛋白量とウイルスDNA量は有意に減少した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究についてはおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
急性感染のモデルとしてHBVレセプターであるナトリウムタウロコール酸共輸送ポリペプチド(NTCP)を発現させたHepG2.C4細胞にnickase-Cas9とsgRNAをレンチウイルスベクターを用いて発現させ、HBV粒子を感染させる系を用いてその効果を評価する。 抗HBV効果の機序についてノザンブロッティング法にてウイルスRNAを定量しB型肝炎ウイルス制御における機序について検討する。DNA切断による効果やDNAへの結合による効果を評価するためにDNA切断効果をもたないCas9蛋白とsgRNAによる効果との比較を行う。さらにディープシークエンス法を用いてDNA切断による遺伝子変異導入効率や非ターゲット配列に対する変異導入について評価する。 in vivoによるDNA切断効果を評価するためにHBV配列を導入したルシフェラーゼプラスミドを作成する。ハイドロダイナミック法を用いてマウス内にnickase-Cas9およびペアsgRNAとターゲットB型肝炎ウイルスDNA配列を挿入したルシフェラーゼプラスミドを注入し、ルシフェラーゼの蛍光にてマウス内でのnickase-Cas9の切断活性を評価する。 HBV関連肝がん細胞モデルマウスにおけるnickase-Cas9とペアsgRNAによる抗腫瘍効果の評価を行うためにHBV関連肝がん細胞株をマウスに皮下注射し、HBV関連肝がん細胞モデルマウスを作成する。マウス内にnickase-Cas9およびペアsgRNAを注入し、HBV関連肝がん細胞の増殖や転移に対する効果を比較検討する。
|