研究実績の概要 |
RING box protein-1(RBX1)はSCFユビキチンリガーゼの構成タンパクの一つである。ユビキチンプロテアソームシステムは様々なシグナルパスウェイや細胞周期を調節していることが報告されているが、近年SCFユビキチンリガーゼの機能障害が癌を含めたさまざまな疾患の原因となっていることが判明している。RBX1は肺癌や乳癌、肝癌、胃癌において過剰発現しており、予後と相関することが報告されている。しかしながら食道癌に関してはRBX1との関係性についての報告は少なく検討を行った。 術前未治療食道癌120例の切除標本を抗RBX1特異抗体で免疫組織染色を行うと,壁深達度(pT1-2 58.5 % v.s. pT3-4 72.0 %, P = 0.002),リンパ節転移(陰性 56.8 % v.s. 陽性 70.6 %, P = 0.004),腫瘍径(<50mm 60.0 % v.s. >50mm 75.0 %, P <0.001),リンパ管侵襲(陰性 51.7 % v.s. 陽性 70.4 %, P = 0.001),静脈侵襲(陰性 59.6 % v.s. 陽性 74.0 %, P = 0.001) において発現率に有意差を認めた.陽性率63 %をカットオフ値としhigh群 (n = 80)とlow群 (n = 40)に分類したところ,5年全生存率においてhigh群は有意に予後不良であった(P = 0.003).また,siRNAを用いてRBX1発現をノックダウンすると増殖能が有意に抑制され,さらに5-FUとの併用効果を検討すると、5-FU単独、siRNA単独よりも優位に増殖能が抑制された.また、FACSではノックダウンによってG2/M期での細胞周期停止が誘導されていることが確認された.術前化学療法後の切除標本を用いた検討では, RBX1 high群は有意にlow群に比べ5年全生存率が低く, 病理組織学的効果判定がgrade1aであった切除標本のRBX1陽性細胞率はgrade1bもしくはgrade2症例に比べ高かった. 以上より,RBX1は食道癌の進展において重要な役割を担っており,新たなバイオマーカー,治療標的となる可能性が示唆された.
|