研究実績の概要 |
本研究では免疫不活化分子の一つであるCD200に着目し,大腸癌肝転移におけるCD200発現の意義について検討した.110例の肝転移切除検体を用いて,ヒトCD200およびリンパ球CD4,CD8,CD45ROの免疫組織学的染色を行い,CD200発現と予後の関連,免疫学的背景について検討した.低発現群63例(57.3%),高発現群47例(42.7%)に分類された.転移巣や原発巣の腫瘍因子は両群間に差は認められなかった.無再発生存率は両群間に差は認めなかったが,CD200高発現群において5年生存率は有意に不良であった(25.5% vs. 56.0%, P=0.009).多変量解析にて腫瘍径30mm以上(HR=1.309, P=0.002),術前CEA20ng/ml以上(HR=2.814, P<0.001),原発巣リンパ節転移N2以上(HR=1.182, P=0.049),CD200高発現(HR=2.236,P=0.004)が独立した予後不良因子であった.さらに,腫瘍内浸潤リンパ球との関連では,CD200高発現群においてCD4(P=0.005),CD8(P=0.001)およびCD45RO(P<0.001)が有意に少なく,腫瘍免疫が抑制されていた.以上より,CD200は大腸癌肝転移の免疫応答において重要な役割を果たしている可能性があり,新規治療標的となりうる可能性が示された.また,本研究において,肝切除術前化学療法施行例では, 非施行例よりもCD200発現が高率であった.さらに,術前化学療法後にCD200高発現である例では非常に予後が不良で良であり,CD200発現は化学療法に誘導され治療抵抗性に関与する可能性も示唆された.
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