研究課題
我々は、担癌患者における成熟能や抗原提示能の低下といった樹状細胞療法の弱点を克服するために、iPS細胞由来樹状細胞 (iPSDCs) を用いた癌ワクチン療法の基礎研究を行ってきた。本研究の目的は、正常細胞には発現せず、腫瘍における遺伝子変異によってのみ発現するneoantigenを標的としたiPSDCsの作成を行い、副作用が少なく、且つ強力な抗原提示が可能な個別化癌ワクチン療法の基礎的研究を行うことである。研究への参加の同意が得られた3名の大腸癌担癌患者の末梢血単核球から山中4因子を導入することでiPS細胞を樹立し、分化誘導したiPSDCsに腫瘍から抽出したmRNAを増幅したivtRNAを遺伝子導入した。iPSDCs-ivtRNAの刺激により得られたCTLsは、CTOS(Cancer Tissue-Originated Spheroid)法でライン化した患者自身の癌細胞に対し、癌細胞特異的な細胞傷害性を示すことが、いずれの患者においても証明された。このうち1名の患者において、whole-exome sequenceを行う事で変異遺伝子の同定を行った。Whole-exome sequenceの結果、1251のnonsynonymous mutationが検出され、その中で、腫瘍抗原性に富むと考えられるcandidate neoantigen peptideを12個同定し、ペプチド合成を行った。iPSDCs-ivtRNAの刺激で得られたCD8陽性T細胞をELISpot assayを行った結果、一つのneoantigen peptideに対する免疫応答を認め、このとこでiPSDCs-ivtRNAは、neoantigenを介した免疫応答を誘導することが証明された(Maruoka et al. Scientific Reports.2022)。
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Scientific Reports
巻: 12 ページ: 3295
10.1038/s41598-022-07305-1.