膵癌は予後不良な難病で、種々の治療モダリティの開発にも関わらず死亡数は年々増加している。膵癌治療の問題点は、1. 既存の診断手法では膵癌の早期診断が困難なため根治手術が可能なステージで発見されることが少ないこと、2. 膵癌の分子生物学的特徴に基づいた特異性の高い治療がないこと、が挙げられる。これを克服し治療成績を向上させるためには、外科切除可能な病変の早期診断および膵癌の生物学的特徴に裏付けられた層別化に基づいた集学的治療戦略が必要である。また、膵臓は腫瘍部からの生検が他の消化管悪性腫瘍に比べ困難な臓器であり、簡便で低侵襲な検査手法が求められている。その中で体液中の癌由来の分子を測定するリキッド・バイオプシーは注目されている。 本研究では膵癌患者の血清から抽出したエクソソームを用いてレクチンマイクロアレイによる比較糖鎖プロファイリングを実施し、膵癌を特異的に結合する候補レクチンを2種類同定した。それらの候補レクチンで膵癌切除検体のパラフィン包埋切片を染色し、腫瘍部分で染色陽性となり、正常膵組織では染色陰性となることを確認した。エクソカウンターというエクソソームの定量測定可能な機器は、2種類の抗体でサンドイッチ検出すること血清中のエクソソーム数を測定する。エクソカウンターを用いて抗体とレクチンでエクソソームをサンドイッチ検出する実験系の確立を検証している。この系で血清中のエクソソーム上に発現する糖鎖を解析することにより、膵癌の早期発見、進行度や治療効果のモニタリング等に利用できると考えている。
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