研究実績の概要 |
【方法】1)脂肪肝ラットの70%の部分温虚血、再灌流モデルを作成し、虚血時間を45, 75分とした。虚血終了時、再灌流後1, 6時間に肝臓、血液を採取した。2) ラット70%肝切除モデルを確立した。3)肝癌細胞株を用いて、脂肪変性や虚血再灌流に伴うストレスが、微小環境の変化を介して肝細胞がんの増殖、転移に与える影響をin vitroで検討した。 【結果】1) 血中ALT, AST、傷害(病理)スコアは再灌流6時間までにピーク値をとり、虚血時間依存的に、また、脂肪肝でより強く傷害された。これらの評価では虚血終了時に虚血時間依存した群間差を認めず、術後早期の肝機能障害、肝転移促進要因、肝再生不良等の予測は困難であった。肝組織切片をイメージング質量分析(MS)法で解析すると、陰イオンモード、m/z 200~1500 の範囲で検出された200以上のピークのうち、虚血時間の相異、あるいは、脂肪肝の有無で比較し、虚血終了時に有意な違いを認めた物質の推移を検討した。これらの物質は、虚血中に増減し、再灌流後にさらに変化が増強する、あるいは、正常肝の値に復する、等の幾つかの推移を呈した。側鎖構成が異なる数種のLysophosphatidylinositol(LPI)が虚血時間依存的に虚血中に蓄積し、肝Zone1に蓄積していた。これらの変化は脂肪肝で増強され、Pringle法併用肝切除における、innate immunity増強、癌細胞の接着、浸潤に影響を与える可能性が見出された。 2) ラット70%肝切除、3) 肝癌細胞株の脂肪酸 (オレイン酸、パルミチン酸) 添加培養等のモデル作成に着手し、概ね安定した。
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