Muse細胞は生体に内在する多能性幹細胞であり安全性に優れているため、既に心筋梗塞・脳梗塞を対象に臨床研究が開始されている。申請者は、齧歯類やブタの肝障害モデルを使った実験でMuse細胞の肝再生・肝機能改善効果を解明しており、Muse細胞の肝疾患への臨床応用も期待される。肝切除後肝不全は未だ有効な治療法がなく難治性であり、本研究は、Muse細胞の肝切除後肝不全に対する予防・治療への臨床応用を目指し、肝切除患者の周術期における末梢血中Muse細胞がどのように変動するかを明らかにし、Muse細胞の補充が必要である肝疾患・背景肝・術式を解明すること、が目的である。 当初計画していた研究項目は①肝切除患者の周術期の末梢血液中Muse細胞数の評価、単離したMuse細胞の質的評価、②患者を疾患・背景肝・術式で群別化し、それぞれの群ごとの肝切除周術期のMuse細胞の血中動態の把握、である。 現在の状況としては、健常者の末梢血を採取し、SSEA3抗体を用いてFACSを行うために、FACSの条件検討を行なっている。まだ適切な条件が定まっておらずヒトMuse細胞の単離に難渋している。具体的にはFACSを行なっても、末梢血内にSSEA3陽性細胞の割合が0.5未満と非常に少量になっている。この為、末梢血のSSEA3陽性細胞の多能性幹細胞としての性質が保持されているかを確認する実験(単細胞浮遊培養によるクラスター形成率の測定、3胚葉性分化能をPCR・免疫染色で評価する)や肝切除患者の血液を対象とした実験はまだ開始できていない現状である。
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