現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①食道癌 術前無治療切除標本におけるImmunoscore評価の確立と予後予測 対象は、2000から2017年までに当院及び大阪国際がんセンターで術前無治療にて外科切除を行った食道扁平上皮癌切除例300例で、切除標本における組織免疫染色により腫瘍中心部および辺縁部のそれぞれでCD3、CD8陽性Tリンパ球陽性細胞数を測定し、Immunoscore(IS)を算出、予後と臨床病理学的因子との相関を検討した。方法は既報を踏襲し、腫瘍中心部と辺縁部のリンパ球のhot spotを複数撮影しauto cell countを行い、TIL数の多いTOP5視野を選択、その合計の中央値をcut offとしてスコア化し、最終的にCD3とCD8を足し合わせたスコアを2群化した(low群:0-2点/high群:3-4点)。結果は、ISの2群間(high群=80/low群=220)で臨床病理学的因子との有意な相関は認めなかった。また全症例では、IS high群はlow群と比べて生存率が高い傾向にあった(IS high vs lowの[OS]:77.6 vs 65.8%,p=0.0722)。特に、pStageⅡ-Ⅳの進行例ではIS high群はlow群と比較し有意に予後良好であった(high vs low群の5年OS;70.2 vs 54.5%,p=0.0208)。さらに多変量解析により、ISが独立した予後予測因子である事が明らかになった(Hazard ratio[HR]=2.07,95%CI=1.26-3.41,p=0.0043)。今回の検討では食道癌術前無治療進行症例おいて、ISが予後予測に有用である可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
食道癌における標準治療である術前化学療法(NAC)を行った症例に関しては、術後の切除検体においては、NACによる修飾により、腫瘍辺縁部と中心部の区別がつかなくなり、ISが正しく評価できないと言う問題点が生じる。その問題を解決するために、食道癌の術前内視鏡生検検体を用いた、予後とNACの効果予測を行っている。対象は2009から2013年に当院で術前化学療法(FAP or DCF)を行った食道扁平上皮癌患者146例の治療前内視鏡生検で、方法は組織免疫染色を行い生検腫瘍部の全CD3およびCD8リンパ球密度を測定しその中央値で2群化し予後・治療効果との相関をみた。結果は、CD3、CD8共にhigh群がlow群より予後良好であり (CD3 5年OS: high vs low群 63.9% vs 42.9%,p=0.0194 / CD8 5年OS:high vs low群 62.7% vs 44.2%,p=0.0393)、多変量解析ではCD3が独立予後予測因子であった(HR=1.75,95%CI=1.12-2.78,p=0.0169)。また治療効果との相関については、CD3密度high群がlow群より組織学的治療効果(non-responder:Grade 0,1a/responder:Grade1b,2,3)が有意に高かった(high vs low[responder割合]:[62.0%] vs [38.0%], p=0.0047)。今後は、内視鏡生検検体におけるTIL評価法の標準化、そして免疫チェックポイント阻害薬の治療効果予測への応用も検討している。 また、切除検体のImmunoscore評価も含め、他の免疫因子との関連性も含め検討していく予定である。
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