研究課題/領域番号 |
19K18150
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小田切 数基 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (30781794)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | KMT2D / H3K4me1 / 化学療法 / 感受性 / 発現 |
研究実績の概要 |
日本人の食道扁平上皮癌患者の約20%に変異が存在するとされるEpigenetic regulator のlysine (K) methyltransferase 2D (KMT2D)遺伝子の機能や、そのTarget geneやその相互作用の解明は進んでいない。 食道癌切除検体の免疫染色からKMT2Dの発現低下は予後不良と化学療法感受性の悪いこととの関連が示された。また、KMT2Dの正常機能はHistone3 Lysin4のモノメチル化(H3K4me1)による主にエンハンサー領域のユークロマチン化によって転写活性を調整することであるため、同患者サンプルにおいてH3K4me1で免疫染色を行ったところ、H3K4me1の低発現は予後不良と化学療法感受性の悪いことが示された。この二つの因子を掛け合わせると、KMT2D、H3K4me1のいずれかが低発現であることは共に高発現であることに比較して無再発生存期間、全生存期間ともに予後不良であり、化学療法感受性が悪かった。 siRNAによるKMT2Dの発現低下調整をした食道癌細胞株において、化学療法感受性が低下していた。この結果は食道癌で一般的に使用される抗癌剤のドセタキセル、シスプラチン、フルオロウラシルのいずれでも見られていた。 Target geneの検索を目的としてTCGAデータベースからGene Set Enrichment Analysisを行い、紡錘体形成や酸化的リン酸化、活性酸素、DNA修復といったGene setとの関連が示唆され、上記の発現低下調整をした細胞株において紡錘体形成と活性酸素に関連するいくつかのgeneとの関連が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
食道癌患者手術サンプルを用いた免疫染色の結果を元に、KMT2D発現低下が化学療法の低感受性と関連があると考えられたため、KMT2D発現は低下させた細胞株を樹立し、化学療法感受性との関連を確かめる。それと並行しながら、同細胞株をもちいたchromatin immunoprecipitation(ChIP)による解析の準備を進める予定としていた。in vivo実験を見据えて食道癌の2細胞株にshRNAの導入を行い、目的の部位に導入されたものの、KMT2Dの発現に差が見られなかったため、CRISPR/Cas9を用いたKnock-out KMT2D細胞株(KO株)を樹立し、実験を進めたが、実験結果に安定した結果が得られずに、KO株の使用を断念した。続いてsiRNAを用いたKnock downを行ったところ、安定した結果が得られるようになったところで、1年の経過となった。本来であれば、機序の解析のほとんどは終了し、ChIP-seaquenceのライブラリ作成までは終了している予定であった。
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今後の研究の推進方策 |
siKMT2Dを用いた、化学療法感受性に関連する機序の解明のため、in vitro、in vivoでの解析を行う。それと並行し、ChIP-seaquenceのためのライブラリ作成を行い、Gene set enrichment analysisで得られた結果と照らし合わせながらTarget geneの検索と確認を行っていく。
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