現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大腸癌の臨床病理学的/分子学的特徴に対するARID1A変異の関連性を検討した。2015年4月から2018年3月までに共同研究者保有の592パネルを用いて次世代シーケンシングを行った大腸癌5,920症例(探索群)およびpublic database から得られた大腸癌2,252症例(検証群)を対象とした。ARID1A変異と臨床病理学的特徴、免疫関連分子学的特徴[マイクロサテライト不安定性(MSI)、腫瘍遺伝子変異量(TMB)、PD-L1発現量、推定浸潤免疫細胞量]との関連、およびARID1A変異と関連する遺伝子群、をDNA/RNAシーケンシング、および免疫組織化学検査を用いて解析した。ARID1A変異は8-9%に認め、右側およびStageが早期の腫瘍に有意に多かった。ARID1A変異を伴う腫瘍は遺伝子的に不安定な特徴(MSI-high、TMB-high)を持ち、PD-L1が高発現であり(PD-L1-high)、RNAシーケンシングを用いた解析から細胞傷害性T細胞(CTL)の浸潤が高頻度(CTL-high)であることが推測された。また、MSI-highを伴わないARID1A変異腫瘍においても同様にTMB-high、PD-L1-high、CTL-highの特徴を認めた。ARID1A変異と他の遺伝子との関連を検索したところ、クロマチン修飾、DNA修復、WNTシグナル、EGFR経路に属する遺伝子との共変異を認め、パスウェイ解析にてもDNA修復経路と強い相関関係を認めた。また、化学療法/放射線療法の効果予測因子であるATM, ATR, RAD50, およびBRCA1の発現量はARID1A変異腫瘍において有意に抑制されていた。以上よりARID1A変異は大腸癌において新規治療標的になりうることが示唆された。現時点での知見を論文投稿準備中であり、研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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