大腸癌は本邦における癌罹患数および臓器別癌死亡数で上位を占め、世界的に研究がすすめられている癌腫である。これまでに申請者らは大腸癌における分子学的背景 (genetic change、epigenetic change) や患者および癌の免疫学的背景に注目した実臨床との橋渡し研究に携わってきた。本研究において注目するARID1Aはクロマチンリモデリング因子であり、その変異は癌におけるマイクロサテライト不安定性と強い相関を示す。近年、ARID1A変異が卵巣癌において免疫チェックポイント阻害剤の効果予測因子になる可能性が報告されたものの、多数の臨床検体を用いてその有用性を示した報告はない。本研究の目的は、大腸癌においてARID1A変異がきたす現象変化を明らかにし、治療のターゲットになりうることを解明することである。ARID1Aは各癌腫において比較的高率に遺伝子変異を認めること(大腸癌においては約10%)から、本研究により大腸癌においてARID1A変異が治療ターゲットになりうることを明らかにすることができれば、大腸癌のみならず各種癌に対する治療法確立の一役を果たすことができる。
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