研究実績の概要 |
ヒト大腸癌細胞株(DLD-1, HT-29, HCT116)を用いて癌幹細胞の抽出を試みた.まず,癌幹細胞に特徴的とされるCD44, CD133が高発現する細胞の抽出を試み,抽出細胞をSphere formation assayと,血清非含有培地で3D培養を行い癌幹細胞株の樹立を試みた.しかし,抽出細胞のCD44, CD133の蛋白,mRNA発現強度の再現性が得られず,CD44/CD133を用いた癌幹細胞の抽出を断念した.次に,CD44, CD133に加えて,癌幹細胞に高発現するとされるALDH1をマーカーとし,何れかのみが高発現している細胞のみを抽出,同手法で,幹細胞性質を有した集団のみを濃縮し樹立を試みた.結果,CD44,CD133は前者同様に再現性を得ることができなかったが,HT-29よりALDH1を用いて抽出した細胞は幹細胞性質を有しALDH1の発現についても再現性が確認できた.現在この細胞株よりmRNAを抽出し,micro array法による解析に提出,Ca2+イオンダイナミクス関連遺伝子の発現や,Ca2+シグナルの癌幹細胞における役割を検証するための準備を行っているところである. 一方,ヒト由来の癌組織より癌幹細胞成分を抽出するため,切除直後の標本より癌断片を抽出,Trypsin-EDTAと物理的破砕後,フィルターを通し無血清3D培養を行うことで抽出を試みたが細胞の増殖を得ることができなかった.次に近年報告が散見されるCancer Tissue-Originated Spheroid(CTOS)の樹立法に基づき,前述のフィルターを何層か通過させた上で、フィルター上に残存した細胞塊を無血清培養する手法を用いたところ,Spheroidの形成までは確認された.これらも,樹立法が安定次第micro array法による遺伝子解析に提出する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請時には以下の4点が2019年度に終了する予定であった。(1) ヒト大腸癌細胞株、手術切除組織からのCSCsの分離と細胞株樹立,(2) 大腸癌幹細胞の網羅的遺伝子解析,(3) 標的遺伝子(特にSERCA)の発現の意義の検討,(4) 免疫組織化学による標的遺伝子(特にSERCA発現)の評価.しかしながら現時点では、(1).(2)の目途がある程度ついた状況である。以上よりやや遅れていると判断した.
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